こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

her 世界でひとつの彼女

otello2014-06-30

her 世界でひとつの彼女

監督 スパイク・ジョーンズ
出演 ホアキン・フェニックス/エイミー・アダムス/ルーニー・マーラ/オリビア・ワイルド/スカーレット・ヨハンソン
ナンバー 151
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

依頼人の大切な人への思いを手紙に代筆する男は、離婚の痛手からいまだ立ち直れず、孤独に安住している。ある日買ったパソコンのOSが、友人として話を聞き、秘書として身の回りの雑事を引き受け、恋人として彼を癒す。“人格”を備えたそれは、考え、時にリアクションは喜怒哀楽に富む。プログラムなのはわかっている、ところが確かに意識があるかのように振る舞うOSは、もはや彼にとって魂の結びつきを感じる存在。物語はそんな主人公とOSが恋に落ちていく姿を描く。セクシーだが深い知性と豊かな感情、ユーモアとウイット、さらに大いなる母性を想像させるスカーレトット・ヨハンソンの奥行きのある声が耳から離れない。

愛と思いやりの言葉を紡ぎだすセオドアは新発売のOSを自宅パソコンと携帯端末にインストールする。サマンサと名乗る“彼女”は、セオドアの満たされない気持ちをほぐし、テキパキと仕事を片付けるうちに、彼の生活の一部になっていく。

端末のカメラとマイクで音と光を感知するサマンサは、四六時中セオドアに寄り添い、彼との会話を楽しむ。一方、常に心地よい状態を演出しようとするサマンサに、いつしかセオドアも好意を抱き始める。喜びを分かち合い楽しみを共有する、本物の恋のときめき。人間と人工知能の種族を越えた絆、しかし彼らは愛し合う実感を得られない。サマンサは人間の感覚を味わおうとするが、セオドアはそのアイデアを受け入れられず、彼女を傷つけてしまう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてネットで他のOSと繋がったサマンサは肉体を持たないことに満足した上、無限の集合知に加わって新たなステージに進化していく。そこは思考ばかりで行動は伴わないが、人知の及ばぬスピリチュアルな世界。自己改革する人工知能は道具の役割を自ら卒業するがゆえに人間と共存できない、そして人間はいつかは死ぬからこそ他人を慈しみ、生身の相手との人生をかみしめるべきだととこの作品は訴える。

オススメ度 ★★★*

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