こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間

otello2014-07-07

パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間 Parkland

監督 ピーター・ランデズマン
出演 ザック・エフロン/マーシャ・ゲイ・ハーデン/ビリー・ボブ・ソーントン/ジャッキー・ウィーバー/ポール・ジアマッティ/ジェームズ・バッジ・デール/ジェレミー・ストロング/ジャッキー・アール・ヘイリー
ナンバー 157
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

あの日起きた事件の現場に居合わせた人々に襲い掛かるあわただしさと緊張感、歴史が作られる真っただ中にいる興奮と高揚。経験のない未曾有の危機にできることを全力で遂行するのみ。映画はケネディ大統領暗殺後の4日間、側近や関係者は何を見て何をして何を感じたかを追う。“魔法の銃弾”の謎が解けたわけでもない、新たな珍説・陰謀説を披露するわけでもない。それでも、実際にそれを体験してしまった彼らの息遣いまで再現した映像は、圧倒的なリアリティを持って当事者にとっての“真実”を物語る。唯一の証拠となるフィルムを撮影した男が、1発の銃弾に変えられてしまった人生を呪う場面が運命の皮肉を饒舌に訴える。

1963年11月22日、頭部を狙撃されたケネディ大統領はパークランド病院に搬送され死亡が確認される。2日後、逮捕された容疑者・オズワルドもまた衆人環視の前で撃たれ、パークランド病院で息を引き取る。

最初は当惑し、やがて事の重大さに気づくと高速で頭を回転させる。二次攻撃に備える者、冷静に現状を分析する者、意味を飲み込めずただ体を動かす者。全米中が悲嘆にくれ喪失感に苛まれているが、今や危急存亡の秋、自分たちが怒りや悲しみに浸っている暇はない。だが、地元警察とシークレットサービスケネディの遺体を巡って縄張り争いをしている。オズワルドから脅迫状を受け取っていたFBI支局はファイルを隠滅しようとする。この非常時にこそ国家に尽くそうと身を粉にする者もいる反面、こんな時でもエゴをむき出しにする人間がいる。そのコントラストが鮮やかだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

息子の無実を主張するオズワルドの母の、狂信的なまでの個性が印象的だ。まだ良識をうかがわせる長男にたしなめられても決して自説を曲げないうえ、“愛国者の母”としてのプライドは揺るがず、オズワルドを“ケネディと同じアーリントン墓地に葬れ”とまでいう。結局葬儀はなく、兄は記者に手伝ってもらってやっとオズワルドの棺を墓穴に収める。その寂しい葬送に、残された家族がたどった険しい後半生が凝縮されていた。

オススメ度 ★★★*

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