こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

2つ目の窓

otello2014-07-09

2つ目の窓

監督 河瀬直美
出演 村上虹郎/吉永淳/杉本哲太/松田美由紀/渡辺真起子/村上淳
ナンバー 138
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

魂と肉体、生と性。それらが日常に溶け込みこの世とあの世の距離が非常に近い南の島では、あらゆる自然と生物の営みの中に精霊が存在する。そこに住む人々は、命を先祖から連綿と受け継いだ預かり物ととらえ、死はひとつの区切りではあっても終わりではないと解釈している。物語はそんな島で暮らす少女と東京から移住してきた少年の交流を通して、家族とは何かを模索する。ここでは男の役割は小さく、子を産む性である女が万物との対話を引き受ける。満月に象徴される天との交信、セックスを介した大地との共鳴、素潜りでの海との同化。カネや成功では測れない彼らのライフスタイルは、ある種の楽園のようだ。

奄美大島の高校生・界人は海岸で男の死体を発見する。翌日、同級生の杏子から問いかけられるが、男が自分の母親の情夫だと知った界人は答えられない。その後、界人は東京の父親に会いに行き、なぜ母と結婚したのか尋ねる。

人との出会いや人生の出来事を運命だと言う父。父の言い分を理解できない界人。それでも父と過ごしたひと時で界人は母には言えなかった疑問や悩みを打ち明ける。一方で末期がんに侵された杏子の母は、死を恐れる必要はないと杏子に伝える。父と息子、母と娘。男はアイデンティティに苦悩するが、女は次世代への命のリレーを考える。彼らの“思い”のスケールが男と女、東京と奄美の違い。理屈より感情、物質よりも精神、思考より感覚を大切にするのが、より人間的な生き方だと映画は訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて界人は杏子と結ばれ、彼もまた子宮に取り込まれていく。女を媒介としなければ精霊とは交われない島の男は、そうして一人前になっていくのだろう。抜けるような空の青、混じりけのない浅瀬の透明度、きめ細かい砂浜の白、におい立つような木々の緑、漆黒の夜空に浮かぶ満月の黄金色。本来ならそういった色彩をヴィヴィッドに再現してこそこの島の霊的なものを感じることができるはず。彩度が低くライティングも弱い靄がかかったような映像は、遍在する“神”の視点だったのか。。。

オススメ度 ★★*

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