こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ダイバージェント

otello2014-07-14

ダイバージェント DIVERGENT

監督 ニール・バーガー
出演 シャイリーン・ウッドリー/テオ・ジェームズ/アシュレイ・ジャッド/ジェイ・コートニー/レイ・スティーヴンソン/ゾーイ・クラヴィッツ/マギー・Q/ケイト・ウィンスレット
ナンバー 163
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

自分で選んだ道が思っていたのとはまったく違う。闊達として若さを謳歌し、エネルギーに満ちた集団のはずなのに、ギブアップは脱落を意味し、反抗的な態度は死を招きかねない。戦争への反省から社会全体との調和が個人の意志よりも優先されるようになった未来、市民は5つの職能集団に振り分けられ、それぞれのグループで義務を果たしつつ一生を終える。定められた居住区と仕事、後戻りできない人生。だが野心を持たなければそれなりの安定は保障されている。物語はそんな世界で自らの特異な能力に目覚めた少女が、己の力で運命を切り開こうとする姿を描く。いちばん躍動的で生きる喜びにあふれているかに見えた共同体が、実はいちばん厳しいサバイバルにさらされている。その設定は、自由は戦ってつかみ取るものであることを象徴している。

政治担当の“無欲”出身のベアトリスは共同体選択の適性検査で異常値を検出されるが、警備担当の“勇敢”を志望する。そこでは常に教練と競争を課され、勝ち残った者しか構成員と認められない過酷な日々が待っていた。

ライバルであり戦友でもある新人たちの中では身体能力が劣る彼女は、トリスと名を変え秘密特訓を続ける。教官のフォーにも目をかけられ、みるみる才能を開花させていく。さらに戦術を練る理性と敵を恐れぬ勇気、的確な判断力と大胆な行動でいつしか仲間の信頼を得る。そして恐怖を克服する訓練において圧倒的な精神力を見せる。しかしそれこそトリスが“異端者”である証拠、発覚すると殺されると知った彼女はフォーの助けられて正体を隠そうとする。彼女が席次を上げていく過程は小気味よい反面、心に募る共同体への不信感の増大が映画に閉塞感を醸し出す。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

同時に“無欲”から政権を奪おうとする“博学”の陰謀を察知したトリスは反乱阻止に動く。固定された身分から自身を解放するのは当然の欲求、また権力を手に入れようとするのも必然の欲望。平和を維持するためにそれらの人間的側面を抑制してきた制度は破綻するのか、トリスは救世主となりうるのか。二作目以降の彼女の覚醒に期待したい。

オススメ度 ★★*

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