こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

革命の子どもたち

otello2014-07-19

革命の子どもたち

監督 シェーン・オサリバン
出演 重信房子/重信メイ/ウルリケ・マインホフ/ベティーナ・ロール/足立正生/塩見孝也
ナンバー 166
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

人々の冷たい視線にさらされてきたドイツ人の娘。両親の同胞に守られながらもアイデンティティを求める日本人の娘。ドイツ人の娘は母の犯した罪と距離を置き冷静に見つめているのに、情報が偏った社会で育った日本人の娘は母の生き方に疑問を抱くどころかむしろシンパとなっている。映画は革命家、いやテロリストの子として生まれた2人の女性にインタビューを試み、彼女たちが歩んだ数奇な人生をたどる。1970年代、帝国主義からの解放の名のもとに “赤軍”が起こした銃乱射、爆破、ハイジャックなどの無差別テロ、その犯人たちがのうのうと生きながらえ、懐かしむように往時を語るシーンは、革命に殉ずる覚悟のなかった彼ら弱さが浮き彫りにされていた。

ウルリケ・マインホフの娘・ベティーナは獄中自殺した母の脳に異常があったと聞かされる。重信房子の娘・メイは父親の名も教えられずパレスチナの訓練キャンプを転々とした後、偽装した身分で大学に通う。

物心がつき、自分にはテロリストの血が流れていると知った彼女たちは、母を恨んだはず、運命を呪ったはず。だがそういった感情を呑み込んで、彼女たちは母の犯罪を理解し過去と対峙できる年齢に達している。対照的な反応になったのは、やはり環境の違い。ウルリケが革命の敗北の末自らを“総括”したおかげでべティーナがきちんとした大人に見守られたのに対し、逃亡生活を続ける重信房子に連れまわされたメイは母の影響を強烈に受けている。当局に保存されていたウルリケの脳を取り戻せたのも、ベティーナに反社会的思想がないと判断されたからだろう。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一方でメイは日本国籍を認められ、拘置所にいる房子に面会に通う日々。母親が世間を震撼させたテロリストという自覚はあまり見られず、かえってその経歴を肩書にニュースキャスターもどきのことまでして、パレスチナ寄りの解説を披露する。映画は直接メイを非難するわけではないが、謙虚なベティーナと対比させて反省を促しているようにも見えた。。。

オススメ度 ★★*

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