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映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂

otello2014-07-24

ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂
BEYOND THE EDGE

監督 リアン・プーリー
出演 チャド・モフィット/ソナム・シェルパ/ジョン・ライト
ナンバー 171
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

人間の挑戦をことごとくはねのけてきた峻険な岩の壁。抜けるような青空をバックに眼前に聳える威容は圧倒的な存在感で迫ってくる。カメラは1953年に世界で初めてエベレストを征服した英国登山隊の軌跡を追う。山麓の町から人海戦術でベースキャンプに物資を運び、そこから厳選されたシェルパだけが上層キャンプへの随行を許される。最終的に山頂アタックできるのは2人のみ。氷河、クレバス、絶壁、荒天、低酸素……。ひとつ間違えれば命を落とすギリギリの環境で次々と襲う困難を克服しながら登山家たちは一歩ずつ足を進める。その姿には、勇気と忍耐、未知のものに対する強烈な好奇心が科学や文明を発展させてきた人類の歴史が凝縮されていた。

ニュージーランドの養蜂農家で生まれたヒラリーは、抜群の体力と根性、登山技術で英国人主体の登山隊に加わる。予備訓練からやる気満々で隊長にアピールし、第2次アタック隊に指名される。

第2次アタック隊というのは、つまり補欠。せっかく頂上に手が届くところまで来たのに後世に名を残す偉業は仲間のもの。メンバーが発表されたとき、無理やり作ったヒラリーの笑顔が彼の心によぎった思いを代弁する。ところが、酸素ボンベの不備で1次隊は登頂を断念、ヒラリーとテムジンにチャンスが回ってくる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

映画は当時のアーカイブ映像に当事者のインタビュー重ね、さらに登山隊の記録を基に再現したドラマで構成される。60年後、再び撮影機材をエベレストに持ち込んで、登山隊と同じ感覚を味わう醍醐味。だが、どこまでも続く雪原とそそり立つ岩肌に風景を楽しむ余裕などない。まして晴天から暴風雨まで頻繁に表情を変える最後の数百メートルは、どこか神聖不可侵な雰囲気をまとう神の領域。そしてたどり着いた頂にあったのは、ただ数十センチの積もった雪。眼下に広がるヒマラヤの峰々と雲海の壮大な絶景は、人間の意志の勝利を宣言するとともに神の不在を象徴しているようでもあった。。。

オススメ度 ★★*

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