こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

猿の惑星:新世紀 ライジング

otello2014-07-26

猿の惑星:新世紀 ライジング Dawn of the Planet of the Apes

監督 マット・リーブス
出演 アンディ・サーキス/ジェイソン・クラーク/ゲイリー・オールドマン/ケリー・ラッセル/トビー・ケベル/ジュディ・グリア
ナンバー 172
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

怒りや悲しみ、喜びと向上心、落胆と慰め。そういった感情だけでなく、深い思索や苦悩すら身につけてしまった類人猿たちは、いまや森の奥に巨大なコミュニティを形成し、平和な暮らしを享受している。物語は、彼らのテリトリーに文明の残滓を求めて侵入してきた人間たちとの間で起きる軋轢と葛藤を追う。双方に、対話で共存の道を探る者がいる一方、相手を脅威ととらえ排除しようとする者がいる。そして些細な出来事が過去の因縁に火をつけ、憎しみが友情を駆逐していく。そこで描かれているのは暴力に対する理性の敗北。類人猿たちはこれから学んでいくのだろう、しかし人間は何度も繰り返されてきた戦争の歴史から何も学んでいない。鬱蒼とした密林から荒廃した都市へ、ダイナミックなカメラワークと類人猿のリアルな表情が希望なき未来の憂鬱を象徴している。

類人猿の居住区にあるダムを再稼働させるために、マルコムら数人の調査隊が訪れる。マルコムはシーザーに信用されるが、類人猿を敵視するドレイファスが武器を集め、それを知ったコバが反乱を企てる。

人口は極端に減り、生き残った人々は都市の狭いエリアで息をひそめている。快適な生活と安全を保障する電気はダムに頼るしかなく、類人猿たちに生命線を握られている。だが、類人猿に不信と抱いているダム技師の短慮が関係を悪化させる。“いい人間”に愛情豊かに育てられたシーザーは、それでもマルコムの誠意は受け取ろうとする。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてシーザーに代わってリーダーとなったコバが、人間に宣戦布告する。もはや話し合いでは解決できない事態、己の無力感と、“仲間を殺さない”類人猿の掟が破られたことでシーザーは大いなる哀しみを背負う。かつて人間からの解放を願って自由を勝ち取ったのに、眼前に立ち込める暗雲。寛容と相互理解の失われた世界、所詮価値観の違う者同士は個人レベルでは信頼を築けても集団では信じ合いえない、シーザーの瞳にはそんな諦観があふれていた。。。

オススメ度 ★★★*

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