友よ、さらばと言おう MEA CULPA
監督 フレッド・カヴァイエ
出演 ヴァンサン・ランドン/ジル・ルルーシュ/ナディーン・ラバキー/マックス・ベセット・ド・マルグレーヴ
ナンバー 180
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
愛し方を忘れてしまった男は自分の思いを押し付けるばかりで相手の気持ちを考えない。犯罪を人一倍憎む刑事は過剰な正義感を抑えきれず暴走してしまう。かつて親友だった2人はギャングの抗争をきっかけに、再び熱い血をたぎらせ命がけの戦に挑む。彼らの間にあるのはもはや友情ではなく、贖罪。家族を不幸にした男と彼を救えなかった刑事は過去を引きずったまま走り、撃ち、格闘する。物語は息子をギャングに奪われそうになった男が先手を打つが、逆恨みしたギャングにつけ狙われ応戦する姿を描く。追う者と追われる者、目まぐるしく立場が変わる中、銃弾をかいくぐり、自動車を激走させ、超特急の中で大暴れする展開は最後までアクセル全開。ひたすら男たちとギャングの追跡劇に徹したシンプルな構成が疾走感を加速させる。
闘牛場のトイレで粛清現場を目撃した少年・テオはギャングに口封じされそうになる。テオの父で元刑事のシモンは相棒だったフランクと共にギャングのアジトに乗り込むが撃退され、ボスの弟を殺したことから恨みを買う。
今やまともな世界で暮らす術を持たない不器用なシモン。幸せだったころの思い出に感傷的になるが、もう戻れないのも知っている。そんなシモンを見守るかのように寄り添い、力を合わせるフランク。交通事故に狂わされた人生、それ以上に2人には分かちがたい因縁がある。映画は彼らの、頑固だが繊細な怒りと愛に焦点を当て、決してあきらめないアウトサイダーの生き様をエネルギッシュなアクションに昇華させる。シモンを毛嫌いしていたテオの表情が徐々に信頼を帯びていく過程が、父親の復権を象徴していた。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
TGVで避難するシモン一家に迫るギャングたち、パトカーでTGVを追うフランク。高速走行中の列車の中で繰り広げられるマンハントは駆け引きよりも荒々しさを前面に出し、肉体のタフネスのみがモノを言うハードな状況となる。洗練とは程遠いリアルな暴力と激しい息遣いの映像、そして、原題“MEA CULPA”の意味がフランクの胸のしこりだったというオチにも、男の意地が凝縮されていた。
オススメ度 ★★★*