こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フルスロットル

otello2014-08-08

フルスロットル Brick Mansions

監督 カミーユ・ドゥラマーレ
出演 ポール・ウォーカー/ダビッド・ベル/RZA/カタリーナ・ドゥニ
ナンバー 182
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

壁を走り窓を突き抜け踊り場を飛び隣のビルまでジャンプするアクロバティックな動き。人間業とは思えない驚異的な身体能力の主人公・ダビッド・ベルが見せるスタントはこのリメイクでも健在、一種の様式美ともいえる流麗な身のこなしはアートの域に達している。さらに急死したポール・ウォーカーの遺作にふさわしく、体を張ってセダンのトランクルームにしがみついたり、激走するクルマのステアリングを握り絶妙のテクニックを披露するシーンもバッチリ。映画は無法地帯と化した街にはびこる麻薬組織に挑む2人の男の壮絶な戦いを描く。もはやストーリーはつけ足しにすぎず、CGやワイヤーに頼らない生身の肉体を酷使したアクションにひたすら徹する姿勢は瞠目に値する。

近未来のデトロイト、犯罪地区は高い壁で隔離され、内部では麻薬取引が公然と行われている。麻薬組織とトラブルを起こし元恋人を人質に取られたリノは、奪われた中性子爆弾の起爆解除を命じられた刑事のダミアンと組み、組織のボス・トレメインに迫る。

荒涼・殺伐としたスラムの風景は、自動車の街から不況の街に転落したデトロイトの近未来を予感させるリアリティ。一方で再開発の利権を手中にしたい市長一派はスラム地域の一掃を狙っている。同じ市内のわずか数キロの隔たりなのに、天と地ほど開いた貧富の格差。必然的に貧しきものは悪事に手を染める。取り締まる側の警察も腐敗している。そんな中で、まともな暮らしをしたいだけのリノと正義感に燃えるダミアンは、真実がどこにあるかも知らず、目の前のミッションに命を賭ける。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、ダビッド・ベルのパフォーマンスは今や珍しさが薄れ、新たな展開に乏しかったのが物足りなかった。観客は麻薬中毒患者のように常に新たな刺激と過剰なスリルを要求し、俳優たちはそれに応えなければ飽きられてしまう。せっかく米国で再映画化したのだから、より進化・深化したパルクールにチャレンジしてほしかった。

オススメ度 ★★*

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