こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

イン・ザ・ヒーロー

otello2014-08-09

イン・ザ・ヒーロー

監督 武正晴
出演 唐沢寿明/福士蒼汰/黒谷友香/寺島進/小出恵介/加藤雅也/及川光博/和久井映見/杉咲花/松方弘樹
ナンバー 183
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

いつかきっと自分の顔と名前がスクリーンに大写しにされる日が来る、そう信じて20数年、もはや中年の域も過ぎ体にガタが出だしたスタントマン。肉体の鍛錬を欠かさず求道者のような精神論も捨てず、一方で頼まれごとは断れず後輩の面倒見はいい。そんな熱い志を持つ人情家の主人公を唐沢寿明が熱演、ストレートに目標を追う人生の素晴らしさを体現する。そして、“アクションはリアクションがあって成立する”の言葉に象徴されるように、人は人との関係性によって生かされることを強調する。スーツアクターという題材の新鮮さと正攻法で描かれた努力と感動の物語に、つい登場人物を応援したくなる。

戦隊ヒーローのコスチュームを着てスタントをこなす渉は、初めての顔出しの役をアイドルのリョウに奪われる。落ち込む暇もなくリョウの教育係を任され、彼に映画界の慣習を教えていく。ある日、渉にハリウッド映画のオファーが来る。

スタジオでは監督が絶大な権限を持ち、主演俳優のワガママに周りのスタッフは振り回される。照明や小道具等のスタッフやその他大勢の役者たちは地位も低く人間扱いされない。新作映画の顔合わせの席で紹介された渉がセリフ読みになると追い出されるなど、職能がドライに分化している。また、スーツアクターたちの実演が格闘ゲームの動きに反映されているといった撮影所の裏話が興味深く、特に“女性戦隊ヒーロー”をブラジャーにパッドを入れたオッサンが演じているギャップが笑える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

渉に与えられたのは危険極まりない命がけのスタントを生身でこなす役。一世一代の演技を見せようと渉は心を研ぎ澄まして撮影に臨む。その過程で、元妻や娘、苦楽を共にした仲間たちの思いが交錯し、彼の背中を押していく。何よりも、あきらめずに精進を続けていれば必ず誰かが手を差し伸べてくれるという、夢とチャンスを肯定する作り手側のメッセージが非常に心地よかった。

オススメ度 ★★★★

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