こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ミニスキュル 森の小さな仲間たち

otello2014-08-21

ミニスキュル 森の小さな仲間たち MINUSCULE

監督 エレーヌ・ジロー/トマス・ザボ
出演
ナンバー 185
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

森、草原、小川、空き地……。普段の視線の高さではなく地上20センチくらいから見た世界では、小さな昆虫たちが命の喜びを謳歌している。人間が気付かない、気にもしていない、だからこそイマジネーションの扉が開かれ、冒険と成長の旅が始まる。物語は一人ぼっちのてんとう虫が、黒アリの助けを借りながら家族の元に帰ろうとする姿を描く。襲い掛かるトカゲや魚、意地悪なハエ、親切なクモ、力持ちで働きものの黒アリ、貪欲で攻撃的な赤アリなど、それぞれの生き物の特徴をデフォルメした造形の数々は、リアルかつ斬新。CGで再現された、足や羽を高速で動かす昆虫たちの歩行や飛翔の様子が、実写の背景に見事にマッチしている。

生まれたばかりのてんとう虫は赤い目のハエに追われ、羽を失い飛べなくなってしまう。人間が残した角砂糖の缶で一夜を過ごすが、翌朝黒アリたちが缶を運んでいた。てんとう虫は黒アリの仲間に入れてもらう。

言語コミュニケーションはない代わりに、てんとう虫は大きな目をめまぐるしく動かして自分の思いを黒アリに伝える。それにこたえる黒アリも全身を使って意思表示する。大きな角砂糖の缶を担ぎながら赤アリの小隊に追われ、草むらから岩場、川から滝を黒アリとてんとう虫がひたすら進む場面はスリルに満ち、いたるところに天敵が潜む自然界で生きる厳しさを体感させてくれる。一方で、生き残るための共生関係を結ぶなど力を合わせる大切さも忘れない。だが、そういった主張を言葉にせず彼らの行動で示すあたりが、作者がこの作品の対象である子供たちの想像力を信じていることをうかがわせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、角砂糖を狙う赤アリたちは数万の大軍を組織して黒アリの蟻塚を包囲する。洪水のごとく押し寄せる赤アリの軍団は、投石機や破城槌・爪楊枝矢などで突撃してくるのに対し、黒アリは外堀を液体で満たして籠城しロケット花火で応戦する。欧州や中国の中世戦国映画を見るような攻防の数々は手に汗握るスペクタクル、これを子供たちだけに楽しませるのはもったいない。。。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓