こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジャージー・ボーイズ

otello2014-08-23

ジャージー・ボーイズ Jersey Boys

監督 クリント・イーストウッド
出演 ジョン・ロイド・ヤング/エリック・バーゲン/マイケル・ロメンダ/ビンセント・ピアッツァ/クリストファー・ウォーケン
ナンバー 190
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

鼻から抜ける高音は一度聴いたら耳から離れない。斬新でありながら懐かしさも感じさせるメロウなメロディラインは郷愁をいざなう。軍隊に入る勇気はない、ギャングになる覚悟もない、若者たちが唯一故郷の小さな町を出る手段はスターになること。物語は歌手を夢見た4人の少年の希望と栄光、挫折を描く。マネジメントも一手に引き受けていたリーダーが、グループがビッグになるにしたがって成功を持て余し、ついには仲間からの信頼を失ってしまう。その転落が、人間は己の器以上の事業には手を出すべきではないと教えてくれる。環境によって自分も変わらなければならない、常に新しいチャレンジをしなければ飽きられる。そんなショービジネスの世界で、友情で結ばれていたはずの4人にいつしか亀裂が入りバラバラになっていく過程が切ない。

金属音のような声を持つフランキーはトミーとニックに誘われバンドのメインボーカルとなる。そこに楽曲を担当するボブを加え、NYのプロデューサー・クルーの元に売り込みをかける。ザ・フォーシーズンズと名乗った彼らは、ヒット曲を連発する。

レコーディングに全国ツアー、人気者になるにつれフランキーは妻子をかえりみなくなり、トミーは放蕩に溺れていく。そしてトミーの借金がふくれあがり、ステージにまで取り立て屋が押しかけてくる事態になると、ニックの不満が限界を超える。音楽的才能に恵まれたフランキーとボブ、リーダーシップを手放さないトミーの陰で、目立たない存在だったニックが抑えていた感情を爆発させるシーンが、数多あるグループサウンズにおける“替えのきく”メンバーの悲哀を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

1960年代から米国で歌い継がれてきた名曲の数々をちりばめた映像は躍動的で、エピローグには登場人物が歌って踊るミュージカルシーンも盛り込まれ、大いに目と耳を楽しませてくれる。80歳を超えてなお新しいスタイルに挑むクリント・イーストウッドの映画に対する愛は、この作品にもふんだんに注ぎ込まれていた。

オススメ度 ★★★*

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