こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マルティニークからの祈り

otello2014-09-01

マルティニークからの祈り

監督 パク・ウンジン
出演 チョン・ドヨン/ コ・ス/カン・ジウ/ペ・ソンウ/コリンヌ・マシエロ
ナンバー 201
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

周囲の人間が何を言っているのかわからない。わずかな英単語では言い分は伝わらない。ただ、犯罪の当事者になったことは理解できるが、それ以外の詳しい状況は不明のまま手錠をかけられる。大使館はあてにならず、夫への電話もなかなかつながらない。言葉がまったく通じない外国で、突然官憲によって身柄を拘束され女の不安と焦燥、心細さと絶望がリアルに再現される。麻薬と知らず運び屋になって逮捕され、裁判も行われぬまま長期間こう留された彼女は、それでも家族への思いを支えに生き続ける。物語はそんなヒロインの孤独と、彼女を救おうとする夫の愛を描く。エリート意識丸出しの大使館員や検察官といった役人と、ネットユーザーたちの善意の輪が対照的だ。

パリで麻薬密輸容疑をかけられたジョンヨンはカリブ海の小さな島・マルティニーク島の刑務所に送られる。韓国で彼女の帰りを待つ夫・ジョンへは大使館に掛け合うが相手にされず、一方でジョンヨンを騙した詐欺師の居場所を突き止めて検察に逮捕させる。

詐欺師の裁判でジョンヨンの事件への関わりの低さが証明され、裁判記録がパリに送られる。だが、民間人の保護など頭にない事務官は書類を紛失してしまう。ジョンヨンはその間ほとんど援助を与えられず、ジョンへから届く手紙と娘の写真だけを生きる糧に獄中生活に耐えている。虫が這う床、粗末な寝床、まるで「パピヨン」のような監獄が21世紀にも残っているのが驚きだった。映画は遠い異国で心折れそうになるジョンヨンと、孤軍奮闘しながらもやがて支援者を増やしていくジョンへの姿をシンクロさせ、彼らふたりと娘の絆の深さを強調する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

その後、ふたりのマルティニークでの再会と大使館員の怠慢を糾弾したTV番組が放送され、やっと事態は動き出す。そこでも、ジョンヨンを恫喝し、TV局に圧力をかけるなど、自国人を見下した態度をとり続ける大使館員の高慢さは改まらない。長年の軍事政権と民主化以後も強権政治があらたまらない韓国、民の官に対する不信感は相当根強いようだ。。。

オススメ度 ★★★

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