こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

TOKYO TRIBE

otello2014-09-02

TOKYO TRIBE

監督 園子温
出演 鈴木亮平/YOUNG DAIS/清野菜名/大東駿介/石田卓也/市川由衣/ベルナール・アッカ/染谷将太/窪塚洋介/竹内力
ナンバー 202
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

ビートの効いたリズムに乗って発せられる過激な言葉の数々は、暴力とエロス、欲望と憎しみが入り混じった弱肉強食の世界観を強烈に印象付ける。全編ラップで彩るミュージカル仕立ての斬新な映像は荒廃と猥雑をエネルギーに昇華させ、稚拙な脚韻ですら日本語表現の可能性を再認識させてくれる。さらに長回しのショットの多用と無国籍風格闘アクションおよび真っ白なパンツは、“これぞ園子温”という圧倒的なイメージの洪水。物語は東京各地に割拠する若者グループの抗争と、そこに絡む少女の逃避行を描く。個性的な俳優たちがぶっ飛んだ役柄で存在感をアピールしすぎる中、ひたすら己の身体能力を披露し続ける謎の少年? を演じた坂口栞琴のストイックさが光る。

トライブが各繁華街を支配する近未来東京、ブクロのメラはムサシノのカイに罠を仕掛け、他のトライブを巻き込んだ全面戦争に発展する。一方、メラの親分格・ブッパとその息子・ンコイは街で拉致した美少女・スンミを監禁する。

狂暴なブクロ・結束のシブヤ・個人技の新宿・短気な練馬と、トライブの構成員はみな好戦的なのに、ムサシノだけは自由と友情に満ちている。それら極端に色分けされたトライブの特徴には現実の街の雰囲気が凝縮され、コミカルな中にも奇妙な説得力を持つ。街並みから室内、風景など巨大なセットから、「時計じかけ」風の人間家具の部屋、拳銃型の電話や牢屋の鍵を開ける針金などの小物にまでこだわった造形は、パラレルワールド・トーキョーの混沌を見事に再現していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、珍奇な人間はたくさん出てくるが、感情移入できるキャラクターがいないのが残念。主人公の成長や魂の彷徨といった映画の核となるテーマを設定してあればもっと楽しめたはずだ。また、歌は心情を語るべき時に口ずさむもので、状況を説明するのには向いていない。なにより、メラがカイを敵視する理由のショボさと、“チンポチンポ”と繰り返す下品さに辟易した。。。

オススメ度 ★★

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