こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

わたしは生きていける

otello2014-09-04

わたしは生きていける HOW I LIVE NOW

監督 ケヴィン・マクドナルド
出演 シアーシャ・ローナン/トム・ホランド/ジョージ・マッケイ/ハリー・バード/ダニー・マケボイ
ナンバー 205
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

身の回りのあらゆることが気に食わず、敵意をむき出しにする少女。親の愛に恵まれなかった彼女にとって、大都会での暮らしは耐え難かったのだろう。だが、穏やかな気候とフレンドリーないとこたちのおかげで変わっていく。大人は信用できないが同年代ならば心を許せるかもしれない、自分を守るためのルールなんてもういらない、子供だけでも助け合えばなんとかやっていける。物語は、ヒロインが徐々に棘のある態度を改め、他人との接し方を学び、生きる喜びを見出していく成長の過程を瑞々しい感性で描く。ところが、のどかな日常に迫る不穏な影。通信が途絶え、ライフラインを遮断され、情報のないなか不便な生活を彼らは強いられる。映画は、環境に流されるのではなく自らの意志で運命を切り開こうとする彼女の感情を再現する。

NYから英国の伯母宅を訪れたデイジーは、いとこのアイザックとパーパーの人懐こさと自然に囲まれた日々に次第に警戒を解き、長男・エディと恋に落ちる。しかし、突然の戒厳令でデイジーとパイパーは施設に送られる。

前触れもなく強風が吹いたかと思うと雪のような灰が降り、大地を真っ白に染める。核攻撃の残滓、爆心地から遠く離れていても、その恐怖はリアルに伝わってくる。さらに電話もTVもラジオも機能しない。外界で何が起きているのかわからず、やがて彼らの世界に軍隊が土足で踏み込んでくる。やはり大人は信用できない、でも、幼いパイパーは保護しなければならない。大人にならざるを得なかったデイジーの覚悟が、追い詰められた人間の強さを象徴する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

収容所を脱走したデイジーとパイパーは無法地帯と化した田園地帯を抜け、エディとの約束を果たそうとする。道中、もたつくパイパーを甘やかさず、サバイバルの厳しさを教え込むデイジー。それでも、身近な人の死を目の当たりにして、彼女の中に思いやりの気持ちが生まれる。戦争という死と隣り合わせの極限状態にもかかわらず愛に目覚めるデイジーに、大いなる希望を見いだせた。

オススメ度 ★★★

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