こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

記憶探偵と鍵のかかった少女

otello2014-09-06

記憶探偵と鍵のかかった少女 MINDSCAPE

監督 ホルヘ・ドラド
出演 マーク・ストロング/タイッサ・ファーミガ/サスキア・リーヴス/リチャード・ディレイン/インディラ・ヴァルマ/ブライアン・コックス
ナンバー 207
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

他人の意識に入り込み、のぞき見する特殊能力を持つ男。思い出せないこと思い出したくないこと、心が封印していた出来事も潜在意識にははっきりと刻み込まれていて、彼はその“現場”を当事者と共に追体験する。物語は、依頼者の記憶を探り、秘められた真実を明るみにするのを生業とする“記憶探偵”が、美しい少女の脳内でさまよい、欺かれ、操られて行く過程を描く。嘘をつかないはずの記憶のヴィジョンが、第三者の証言とは180度喰い違っている。騙されているのか、誤解しているのか、事実を違う角度で見せられているのか。映画は、そんな主人公の思い込みと少女の妖しげな視線を巧みに絡み合わせ、上質のミステリーを織りなす。

妻の死から立ち直れないジョンは、富豪の娘・アナの拒食症治療を担当する。アナとのセッションは様々な虐待や暴行といった血と死のイメージにあふれ、被害者だったアナは深いトラウマを抱えているはずだった。

ジョンはアナの記憶の裏付けを取ろうとするが、関係者は皆アナとは正反対の“事実”を口にする。アナの記憶は本物なのか、彼女が作り上げた妄想なのか、ジョンは判断がつかないまま疲れ果て、精神的ダメージの中で苦悩する。さらに、バラ、写真、肖像画、そろばん、鍵といった小物が効果的に使われ、何かが起こりそうな予感を刺激する。異常に高いアナの知能と残虐性は「羊たちの沈黙」のレクター博士を彷彿させ、彼女を疑うジョンもまた結局はクラリスのようになる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

目に入った光景、耳でとらえた音、屋敷に設置された監視カメラの映像、それらの情報はいつの間にかアナに都合よく歪められ、セッションを重ねるたびにジョンはますますアナに術中にはまっていく。自分の記憶に侵入してきたジョンに働きかけ、逆に彼の潜在意識をコントロールしようとするアナ。ジョンが見た謎の男の影は、アナがジョンに埋め込んだ幻覚なのだろう。初対面でジョンの言葉をアナが先回りする、この時すでに二人の勝負はついていたのだ。。。

オススメ度 ★★★

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