こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

るろうに剣心 伝説の最期編

otello2014-09-16

るろうに剣心 伝説の最期編

監督 大友啓史
出演 佐藤健/武井咲/青木崇高/福山雅治/江口洋介/ 伊勢谷友介/土屋太鳳/小澤征悦/藤原竜也/神木隆之介
ナンバー 216
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

裏切りの劫火に肌を焼かれ汗が出なくなったゆえ、体内にこもる熱を発散できず激しい動きは15分以上できない。怒りと憎しみはより残忍かつ狡猾な手段に形を変え、復讐の執念となって国家に牙をむく。露出しているのはただれた目と口のみ、全身を包帯で包み凄味のある声だけで己の帝国を築き上げんとする敵役を演じた藤原竜也の存在感の前に、主人公も他のイケメンも高橋メアリージュン以外の女優陣も影が薄い。物語は反乱軍の指揮官に死の淵へ落とされた伝説の人斬りが、苦難の末にリベンジを果たすまでを描く。めまぐるしく移動するスピーディなカメラワークはこの作品でも健在で、ワンショット数十秒の長回しを多用した殺陣は圧巻。ち密さに欠ける設定と展開を圧倒的なアクションで補っていていた。

明治政府の転覆を図る志々雄は砲艦で伊藤博文を脅し、剣心を指名手配にさせる。一方、かつての師匠・清十郎に助けられた剣心は奥義の会得に励み、志々雄の計画を阻止するために東京へ向かうが、蒼紫が行く手を阻む。

悪党の死体すら丁寧に埋葬する優しさを持った少年が剣術を身につけ、幕末の動乱期に名を馳せ、その後不殺を誓う。そんな剣心が師匠に教えを乞い“人を生かす剣”の極意を体得する。剣心と清十郎のやり取りは禅問答めいていて、答えがありそうでない。頭で考えるのではない、心で感じてこそ体が反応する。剣心が過去を克服し一皮むける過程が、達人の世界を垣間見せてくれる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて砲艦に攻め入った剣心と斎藤、佐之助は決着をつけるべく志々雄の子分たちを次々と倒し、志々雄に迫っていく。どこから紛れ込んだのか蒼紫まで加勢し、志々雄の弱点である“時間”が刻々と消費されていく。もはや剣心たちに剣客のプライドなどなく、なりふり構わず志々雄に刀を振るばかり。このあたり主客は逆転し、いつの間にか志々雄に感情移入してしまう。最期まで野望を捨てず炎に包まれていく志々雄に滅びの美学を見た。

オススメ度 ★★*

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