こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

荒野はつらいよ

otello2014-09-25

荒野はつらいよ アリゾナより愛をこめて
A MILLION WAYS TO DIE IN THE WEST

監督 セス・マクファーレン
出演 シャーリーズ・セロン/ アマンダ・サイフリッド/ジョヴァンニ・リビシ/リーアム・ニーソン/ニール・パトリック・ハリス/サラ・シルヴァーマン
ナンバー 223
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

赤茶けた大地、佇立する岩山、わずかな緑と乾燥した空気…。いわゆる本格派西部劇の舞台になるような荒野にぽつんとできた小さな街、そこに住む人々は開拓精神に富んだ勇敢なチャレンジャーばかりではない。物語は、口先ばかりで腕っ節の弱い青年が別れた恋人を巡って決闘を決意、銃の扱いを学ぶうちに男らしさを身に付けていく姿を描く。スノッブな恋敵、謎の美人ガンファイター、相談役の親友、悪名高きならず者。役者はそろった、ところが主人公はあまりにもヒーローとは程遠いヘタレ、映画は彼の射撃修業の過程を通じ、些細なトラブルで人が死ぬこの世界で運命を切り開くには、自分の力を過小評価しないのが大切だと訴える。

やせた土地で羊を飼うアルバートは、決闘直前に敵前逃亡し恋人のルイースにフラれる。ある日、酒場で乱闘中にアナを助けたのをきっかけに親しくなり、ふたりで出かけたお祭りでルイースの新恋人・フォイに決闘を申し込む。

抜群の射撃の腕を誇るアナに弟子入りしたアルバートはめきめき上達するが、まだフォイを倒すほどにはならない。彼に足りないのは自信、アナは様々な手段でアルバートを奮い立たせようとする。地平線上で燃える夕日を眺めながらマリファナを吸うシーンは、雄大で美しい光景に宇宙のエネルギーをもらったような気分にさせてくれる。一方で影絵に始まり、娼婦の口臭、汚れたハンカチなど下ネタも満載だが、エログロに落ちる手前で寸止めされているので不快感は抑えられている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて決闘の日を迎えたアルバートは、アナの顔が見えないとやっぱり弱気の虫が騒ぎだす。そしてさらなる逃避と壮大な幻覚。己の心の深層をのぞき見たアルバートはいままで何を恐れていたのかを知り、それを克服することで真の勇気を手に入れるのだ。人間は生き残るために強くなる、愛する者のためにはもっと強くなれる。アルバートが奇抜なアイデアで最悪の窮地を切り抜ける場面に、知恵こそが神が人間に与えた最大のギフトであると教えられた。

オススメ度 ★★★

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