こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ファーナス 訣別の朝

otello2014-09-29

ファーナス 訣別の朝 OUT OF THE FURNACE

監督 スコット・クーパー
出演 クリスチャン・ベイル/ウディ・ハレルソン/ケイシー・アフレック/フォレスト・ウィテカー/ウィレム・デフォー/ゾーイ・サルダナ/サム・シェパード
ナンバー 227
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

国のために命がけで戦ったのに、退役後の保障はない。もちろん単純な肉体労働でも立派な仕事であるのはわかっている、それでももっと自分にとっても社会にとっても有意義な働き口があるはず。そう信じてまともな職に就こうとしない帰還兵は、自ら危険な行為に身を沈めていく。出口のない不況、希望なき未来。かつて鉄鋼業で発展した地方都市、ダウンタウンはスラム化し、住民は貧しさと隣り合わせ。今や壊滅的となった米国の製造業の閉塞感がリアルに再現される。物語はそんな町で生活する兄弟の愛と復讐を描く。一方で、気に入らない者は容赦なくぶちのめす山地の住民たちの、21世紀とは思えない無法ぶりにしばし言葉を失った。

服役を終えたラッセルは製鉄所に勤めながらイラク戦争で大きなトラウマを負った弟・ロドニーの面倒を見ている。まともに働かないロドニーは借金を返すためにカネを賭け素手で殴りあう非合法ファイトに参加する。

地下ファイトの元締め・デグロートは広大な山中に点在する隠れ家を転々とし決して警察に尻尾をつかまさない。そして一旦山地に入るとそこは彼らの掟が支配する“暴力が正義”の世界。住民の結束は固く、外部の人間も公権力も一切信用せず、デグロートを中心に“独立国”を築いている。ロドニーは山地の廃工場で行われるファイトで八百長を強要され、顔をあざだらけにするしか糧を得る術はない。故郷なのに居場所がない、自活する能力もない、だが悪行に手を染めない程度の良識は残っている。ロドニーの生きづらさは経済のグローバル化という競争に敗れた小市民の苦悩を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて金銭トラブルからロドニーが殺され、デグロートの仕業と知ったラッセルは山中に向かう。警察は無力、頼りになるのは己のカンと銃だけ。時代に取り残され思い通りにならない運命を受け入れながらも静かに暮らそうとしていたラッセルにとって、この復讐こそ人生の意義を感じる瞬間。彼もまた内なる破壊願望を解放する理由が必要だったのだ。

オススメ度 ★★*

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