こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ザ・ゲスト

otello2014-09-30

ザ・ゲスト THE GUEST

監督 アダム・ウィンガード
出演 ダン・スティーブンス/マイカ・モンロー/ランス・レディック/ブレンダン・マイヤー/リーランド・オーサー
ナンバー 226
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

礼儀正しく物腰柔らか、言葉遣いは丁寧で奥ゆかしい。非の打ちどころのない好青年なのに、瞳の奥には深い闇を抱えている。ところが、圧倒的な破壊力で不良どもを瞬殺する格闘術、銃やナイフの扱いにも長け、さらに相手を言いくるめる頭の回転の速さも持つなど、常人をはるかに超えた能力を発揮した瞬間、その肉体からはかすかな腐臭が漂ってくる。物語は“戦死した息子の友人”と名乗る男が遺族の家庭を静かに蝕んでいく過程を描く。何を求めているのか、なぜ追われているのか、巧みにカムフラージュしてきた暗黒が顔を見せたとき、もはや彼の暴走はだれにも止められない。柔和な笑顔に冷徹な暴力を潜ませる謎めいた男をダン・スティーブンスが好演する。

長男の弔問やってきたデイヴィッドをローラは家に招き入れる。紳士的に振る舞うデイヴィッドはすっかり家族に馴染むが、ある朝娘のアナが不穏な電話を立ち聞きし、デイヴィッドの身元を基地に照会する。

その間にも、ローラの夫の悩みを解決し、アナの売人恋人を排除し、息子のルークの喧嘩を収めたりと、デイヴィッドは一家に浸透していく。一方で秘密組織の軍人が重武装した傭兵を集めデイヴィッドの元に緊急出動する。デイヴィッドも武器を揃え応戦の準備を整えている。身を護るために仕方なく手を血に染める善意の逃亡者なのか死に憑りつかれた狂気の殺人マシーンなのか、デイヴィッドの正体がわからないままのどかな田舎町に銃弾の雨が降る。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

一旦スイッチが入ってしまうと肉体的な痛みは感じない。引き金を引くのも躊躇しない。いまや人間的な感情はなく、サバイバル本能に特化されたデイヴィッドはあらゆる邪魔者を容赦なく排除していく。組織に見捨てられた人間兵器の孤独や苦悩といった感傷は一切廃し、もちろん“失敗作だった”という説明もない、ただただ殺しまくるのだ。ジェイソン・ボーンではなくターミネーターと化したデイヴィッド、彼に対する感情移入を拒む潔さがこの作品をいっそう魅力的にしていた。

オススメ度 ★★★*

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