こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アンナプルナ南壁 7,400mの男たち

otello2014-10-02

アンナプルナ南壁 7,400mの男たち

監督 パブロ・イラヴ 、 ミゲルチョ・モリナ
出演 イキナ・オチョア・デ・オルツァ/ウーリー・ステック/ホリア・コリバサヌ/デニス・ウルブコ/アレクセイ・ボロトフ
ナンバー 230
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

手を伸ばせば空に届きそうな高い尾根、しかしそこは空気が薄く気圧も低く水もない氷雪に閉ざされた地獄。征服しようとする人間たちに時に厳しい表情を見せ、耐えられない者は落命する。映画は、地上10番目の高峰を目指す途中突如動けなくなった男を救出するために集まった彼の友人たちの、山への思いを描く。何のために登るのか、何を犠牲にしてきたのか、そして共に修羅場をくぐり抜けてきた者同士だけが共有する、固く太い絆。彼らのインタビューを通じて伝わってくるのは、日々の鍛練と膨大な準備の大切さ、肉体の限界に挑戦する苦難と乗り越えた時の達成感、山に頂に立ったときに味わう全能感。目の前に困難があると避けるのではなく克服しようとする、登山こそが彼らの生き方だ。

2008年ヒマラヤ山脈アンナプルナ南壁にアタックしたイナキは山頂目前で高山病にかかる。同行したホリアはイナキの元に残り看病にあたる一方、知らせを聞いた世界各地の登山家たち12人が現地に駆け付ける。

十分な装備とコンディションで臨んでも、予想外の出来事は起きる。にもかかわらずイナキの危機に、登山家たちはほぼその日のうちに行動を起こす。一つ間違えれば彼らも遭難しかねないのに、自分の心配よりもイナキに集中している。一緒に登ったホリアがイナキに寄り添うのは理解できる、ところが、彼らは日常を投げ打ってまでアンナプルナに集結するのだ。おそらくその費用も自腹だろう、ヘリコプターを飛ばすためにも莫大なカネがかかったはず。登山には勇気以上に綿密な計画が必要、だが友人の命がかかった時、ただただ救わねばならないという衝動に動かされる、そんな彼らの友情が美しい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて救助隊のひとり・ウーリーがイナキの待つテントにたどり着く。ホリアは一足先に下山、二次被害は免れる。結局イナキは助からなかった、それでもイナキを思う登山家たちの心意気は英雄と呼ぶにふさわしい。

オススメ度 ★★*

↓公式サイト↓