こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

日々ロック

otello2014-10-10

日々ロック

監督 入江悠
出演 野村周平/二階堂ふみ/前野朋哉/落合モトキ/岡本啓
ナンバー 229
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

不良にケンカを売られてブチのめされた。好きな娘への気持ちを踏みにじられた。才能のなさを思い知らされた。それでも胸の奥から湧き出す思いを言葉にせずにはいられない。リズムに乗せて叫ばずにはいられない。何のために歌うのかと問うのは何のための人生なのかと問うのと同じ、燃えたぎる情熱こそがロックンロールの魂。物語は売れないロッカーが人気絶頂のアイドル歌手と出会い、自らの生き方を見つめ直していく姿を描く。下積みの苦労から抜け出せず、敗北感に打ちひしがれながらもあきらめられない夢。挫折、苦悩、葛藤…己の弱さとカッコ悪さをすべてさらけ出したとき、人々は共感し彼らの歌に希望を託すのだ。

プロを目指して上京した拓郎たち3人組は5年たっても鳴かず飛ばずの日々。ある日、彼らの歌を聞いた歌手の咲から、曲を書いてくれと頼まれる。咲にはわずかしか時間が残っていなかった。

巨大アリーナを満席にするほどの咲は、やりたい音楽を我慢している自分は文字通り大衆におもねった“虚像”でしかないことを自覚している。それゆえどれほど厳しい環境でも“我が道”を突き進む拓郎たちが羨ましくてたまらない。短いショットの積み重ねで会場の熱気と興奮をテンポよく伝える咲のコンサートと、場末感漂うライブハウスの小さなステージで自作の歌に酔う拓郎たちのコントラストが鮮やかで、音楽界の頂点と底辺の“格差”がわかりやすく再現されていた。チャンスなんてほとんど巡ってこない、志だけで通用するほど甘くない、いくら追ってもつかめない夢もある。そんな拓郎たちの直面する現実が切なく身に染みる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、拓郎を演じた野村修平の過剰なリアクションにはついていけなかった。ロックミュージシャンには情動をコントロールできない奇人変人が多いのは想像がつく、もちろん拓郎の内なる声をデフォルメしているのも理解できる。だが、後半の拓郎は完全に平常心を失ってむしろ情緒障碍者のよう。彼の言動をコメディの域にまで昇華してほしかった。。。

オススメ度 ★★*

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