こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

FRANK フランク

otello2014-10-15

FRANK フランク

監督 レニー・アブラハムソン
出演 マイケル・ファスベンダー/ドーナル・グリーソン/マギー・ギレンホール/スクート・マクネイリー/カーラ・アザール
ナンバー 238
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

天才なのか変人なのか、繊細なのか大胆なのか。でもその指先が爪弾くメロディはすんなりと心にしみわたり、擬人化された歌詞は思わず共感を呼ぶ。物語は、アングラバンドに飛び入り参加した若者が奇妙な張りぼてマスクをかぶる男と出会い、彼の感性に感化されていく過程を描く。音作りには徹底的にこだわる一方で、聴衆にはサービスを一切しない。客がいないのを前提に細々と活動を続けるバンドは、ある意味完結した世界観を持っている。普通の人間を象徴するような主人公にとって、それは新鮮な驚きであると同時に、自らの才能を否定されることでもある。他人とは違うという生きづらさを肩や指先のちょっとした動きで饒舌に語る、マイケル・ファスベンダーのパフォーマンスが目を見張る。

英国の田舎町でプロを目指して作詞作曲に励むジョンは、24時間マスクを外さないフランクが率いるマイナーバンドのキーボード奏者にスカウトされる。別荘でのアルバム作りに同行するうち、フランクの人柄を少しずつ理解していく。

笑っているのか怒っているのか、マンガチックなマスクのせいで感情が読めないフランクに対し、ジョンは微妙な距離感でしか接しられない。一応気に入られているようだが、仲間と認めてもらったわけでもなさそう。そんな中、本来の別荘の借主であるドイツ人夫妻をフランクは上手にいいくるめるシーンは、窓越しにのやり取りがパントマイムを見ているよう。どんな会話が為されたのか、フランクに説得されたオバサンが泣き出すシーンに、彼の不思議な魅力が凝縮されていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてジョンがネットに投稿した動画が米国のロックフェスの目に留まり、招待される。まとめ役のドンはすでに亡く、バンドは方向性が定まらないまま渡米するが、ジョンとフランクを残して他のメンバーは離脱する。まっとうに大衆受けを狙い有名になろうとするジョンと、あくまで自分の道を歩もうとするフランクたち。あえて“夢”に背を向け己の価値観に忠実に生きる人生もある、フランクの後ろ姿はそう教えてくれる。

オススメ度 ★★*

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