こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

不機嫌なママにメルシィ!

otello2014-10-17

不機嫌なママにメルシィ!
LES GARCONS ET GUILLAUME, A TABLE!

監督 ギヨーム・ガリエンヌ
出演 ギヨーム・ガリエンヌ/アンドレ・マルコン/フランソワーズ・ファビアン/ダイアン・クルーガー
ナンバー 243
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

女の子っぽい格好がしたい、女の子っぽく振舞うのが楽しい。いつも導いてくれた大好きなママ好みの“女の子”になろうとしてきたけれど、なかなか理解してもらえない。家庭では家族が守ってくれる、でも偏見も少なくない社会で生き抜くのはやっぱり問題も多い。体は男だけれど気持ちは女、男の子を好きになったりしたけれどゲイにはなれず、女の子といる方が落ち着く。物語は、あえて言うならば“性同一性障害の同性愛者”の主人公の、アイデンティティを探す旅を描く。分け隔てなく接してくれる者、距離を置く者、差別する者、彼の性的嗜好に対し、世間は様々な反応を示す。一方で彼自身も己が何者なのかがわからず試行錯誤を繰り返す。彼の体験を“魂の彷徨”的な大げさなものにせず、コミカルなオブラートに包んだところに好感が持てた。

子供のころからママのようなカッコいい女性に憧れるギョームは、父からはゲイと思われていた。男子校ではいじめられ留学先の英国ではイケメン男子に失恋もするが、胸の奥深くに本心が眠っている気がしてならない。

スポーツは苦手、といって誇れるほどのものはない。ただでさえ傷つきやすく劣等感の塊なのに、将来の夢も希望もない。それはある意味彼の被害妄想が自他を隔てる壁になり、誰一人として心を許せる友人を作ってこなかったのが原因だろう。そんな彼が乗馬の練習中に馬に身を委ねる乗り方を勧められる。疑いを持たずに信頼すれば相手も応えてくれることを示す象徴的な出来事に、ギョームもまた他人を信じてみようと思い始める。彼の生き方も“個性”と認めてくれる俳優の道に進んだのは、運命の必然だったのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

皆と違っていてもいい、自分は自分なのだから。そして、裸の自分をさらけ出せば居場所を見つけられる。結局、自己の内面と誠実に向き合わなければ人生の真実は見えてこないとこの作品は教えてくれる。

オススメ度 ★★★

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