こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ナショナル・ギャラリー 英国の至宝

otello2014-10-23

ナショナル・ギャラリー 英国の至宝 National Gallery

監督 フレデリック・ワイズマン
出演
ナンバー 244
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

人物の表情だけでなく、光の当たり方、手足の位置と体の向き、遠景や小物の配置、隠されたメッセージからメタファーまで、作者は何を意図したのか、どんな思いで筆を取ったのか。学芸員たちは1枚の絵をあらゆる角度から仔細に検討し、数百年の時を超えてなお強烈な輝きを放つ名画たちの“物語”を読み解こうとする。映画は、常設展示される絵画研究のほかに、傷や劣化の修復作業、運営にかかわる予算折衝、企画・広報活動、公開講座といった、美術館の日常業務を追う。設置場所や並べる順番を変えると絵の持つ意味が変わってくるなど、絵画には時代をそのまま切り取った“歴史の証人”としての役割がある。そこを理解したうえでインスピレーションを得、イマジネーションを膨らませることが、絵画を鑑賞する際の画家並びに保存に心血を注いできた先人たちへの礼儀であるとこの作品は教えてくれる。

ナショナル・ギャラリーでは、宗教画についてレクチャーする解説員、今後の在り方に熱弁をふるうベテラン女性職員と耳を傾ける上司、点描画を立体的に再現して触ってもらおうとする学芸員らが忙しく立ち働いている。

ロンドンの中心部・トラファルガー広場を睥睨する威容を誇る建物。カメラはそこでの仕事に向けられる。やはり面白いのは絵画に対する解釈。「サムソンとデリラ」「カルタゴ」、フェルメールや007にも出てきたターナーの絵等、描かれた対象のみならず、背景事情にまで考察を及ぼすあたりが非常に興味深い。暗殺者に襲われる聖人を活写した絵の“悲劇に気づかない人の存在で悲劇を強調する”テクニックが印象的だ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

多角的な絵の分析、修復作業の全貌、企画展の進行etc、それだけでも40分ぐらいのドキュメンタリーになったはずの内容を、3時間で紹介するには駆け足にならざるを得ない。それでも絵画たちが発する、過去から未来への問いかけの答えの一端は見つかったような気がする。。。

オススメ度 ★★★

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