こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

海月姫

otello2014-10-31

海月姫

監督 川村泰祐
出演 能年玲奈/菅田将暉/長谷川博己/池脇千鶴/馬場園梓/太田莉菜
ナンバー 248
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

男なんか必要ない、オタク趣味を理解しあえる仲間がいるから。流行の洋服もメークも興味はない、ボロいけれど居心地のいいアパートで暮らしているから。恋もオシャレも拒絶した5人の女の平和な日常、物語はそんな空間に闖入してきたイケメン女装男子が、彼女たちの目を外の世界に向けさせようとする過程を追う。世間からズレた女たちと世間ずれした若者、そのちぐはぐでかみ合わない会話が楽しい。一方で、みな忘れたい過去を抱えていて、これ以上傷つきたくないから殻にこもっているのも明らかになる。時に奇行に走り、繁華街を“魔物が住む”と恐れる彼女たちは、現実逃避でかろうじて生きていられるのだ。その姿がデフォルメされるほど、トラウマの深さが浮き彫りになっていく。

イラストレーターを目指す海月はクラゲのスケッチに励む日々。パッとしないがそれなりに充実している。ある日、クラゲ屋でもめているところを美女に助けられ部屋に泊めるが、実はウィッグをつけた大学生・蔵之介だった。

女と偽ったまま男子禁制の共同生活に入り浸る蔵之介は、海月に女子力UP服を着せる。初めて気づいた自分の魅力、初めて女性として扱われる喜び。そして偶然出会った蔵之介の兄・修に海月は惹かれていく。好きになるという気持ちにうまく対処できず、トンチンカンな言動を繰り返す海月を、能年玲奈がとぼけた味わいを出しつつキュートに演じる。何より、あらゆる女子よりも綺麗な蔵之介を演じる菅田将暉のなまめかしさと、“女”を捨てたオタク女子たちのヴィジュアル的落差が笑いを誘う。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてアパートが地上げの対象になり、蔵之介に煽られた彼女たちはファッションショーで反対運動を始める。どんな人間でも得意なこと、他人とは違うセンスを持っている。それを見つけて磨けば人生に対し積極的になれる。三国志萌えの長身女が見事なモデルになりきる変身ぶりに、何事も挑戦しなければ前には進めないとこの作品は教えてくれる。

オススメ度 ★★★

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