こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

二重生活

otello2014-11-20

二重生活 浮城謎事

監督 ロウ・イエ
出演 ハオ・レイ/チン・ハオ/チー・シー/
ナンバー 270
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

雨の中の交通事故、ママ友の悩み、目撃してしまった夫の不貞。偶然と思えたことが必然となり、夫と娘に恵まれ家政婦つきの暮らしを満喫していた妻の平穏な日常が崩れていく。彼女だけが知らなかった、でも小出しにされる情報は夫の二重生活を確かに裏付ける。嫉妬と怒り、焦燥と憎しみ、カメラはそんなヒロインの表情を細部までとらえ、彼女の感情に迫っていく。一方で愛人であるシングルマザーは己の境遇を嘆いたりせず、男子を生んだ実績に誇りと希望を見出している。ふたりの女、ふたつの家庭、そして3人目の女。交錯する過去と現在、並行する企みと事故、一見無関係な出来事が一つに収束するとき、運命は予想もしない方向に転がっていく。映画はミステリアスな装いをまといながら愛という迷宮に見る者をいざなう。

仕事も家庭も順調だったルー・ジエは保育園でサン・チーとママ友になる。サン・チーから“夫が浮気している”と相談を受けているときに、夫のチャオが若い娘とイチャついている現場に遭遇、ルー・ジエは娘の後をつける。

その後、交通事故死した女子大生が最後に連絡を取った相手としてチャオが刑事から尋問される。死んだのはルー・ジエが尾行した娘、だがチャオにはアリバイがあり穏便に済ませようとする。夫の裏切りに確信を持ったルー・ジエは陰湿な仕打ちを繰り返しチャオを追い詰めていくが、チャオはあくまでシラを切る。外に女を作るのは甲斐性がある証拠と、口には出さなくても態度で示すチャオにルー・ジエの憤りは増す。このあたり、男系社会の伝統が21世紀にも色濃く残っている中国人の家族観がリアルに再現される。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて明らかになっていく交通事故の真相、すべてを知るホームレスの存在。殺意はなかった、偶発だったと思いたい。誰もが罪悪感を胸に抱えつつ現実に向き合う勇気を持てず、目を逸らそうとしている。自分たちの生活を守るために良心を犠牲にする、苦悩に苛まれる彼らの姿が人間の真実を象徴していた。

オススメ度 ★★★★

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