こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

激戦 ハート・オブ・ファイト

otello2014-11-22

激戦 ハート・オブ・ファイト

監督 ダンテ・ラム
出演 ニック・チョン/エディ・ポン/メイ・ティン/ワン・バオチャン/クリスタル・リー
ナンバー 271
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

借金取りに追われる中年男は薄幸の母娘と出会って守るべきものができる。いまだ進むべき道が決まらない青年は賞金欲しさに格闘技を始める。運命と戦う決意を固めた男が2人飛び込んだのは、己の体ひとつで殴り、蹴り、締め上げる総合格闘技の世界。ハードな鍛練のなかでぜい肉をそぎ落とし、獲物を狙う野獣の目を持つ戦闘マシーンに変身していく。自分のためだけなら挫けていたかもしれない、だがリングに立つのは大切な人のため。熱い思いが彼らを奮い立たせ、決してあきらめない魂を与えてくれる。物語は高額の賞金を目標にしたフリーター八百長で追放された元ボクサーに弟子入りし、チャンピオンを目指す姿を描く。古タイヤ、太チェーン、荷車、ドラム缶etc. 廃棄物を使った原始的な筋トレが彼らのハングリー精神を象徴する。

マカオに逃げてきたファイは格闘技ジムでトレーナーとなる。ある日、入門してきたスーチーに請われボクシングを教えるが、その後スーチーは総合格闘技の大会に出たいと言い出す。

打撃系立ち技だけでなく関節技や寝技をマスターしたスーチーはデビュー戦で辛勝、次戦でもぼろぼろになりながらも最後まで戦い抜く。彼の雄姿を遠くから見つめているのは破産して人生に絶望した父。スーチーは自ら限界に挑戦し続けることで父を立ち直らせようとする。カネや愛情だけでは解決しない、生きていく勇気を見せて親孝行するスーチーの背中には、儒教の道徳観が張り付いていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

さらに、ルームシェアしていた母娘のために今度はファイがリングに立つ。老体に鞭を打ち、黙々と全身を研ぎ澄ますファイ。彼が試合で見せる万全のボディは、ファイを演じるニック・チョン自身が作り上げた生身の筋肉。50歳近くになっても節制とエクササイズでここまで人体は改造できるのだ。素人やロートルが短期間の特訓で勝てるほど実際の総合格闘技は甘くないだろう。しかし、俳優たちの本物の肉体がそんなツッコミを跳ね返す。香港映画の神髄を見せる作品だった。

オススメ度 ★★★★

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