こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

救いたい

otello2014-11-25

救いたい

監督 神山征二郎
出演 鈴木京香/三浦友和/貫地谷しほり/渡辺大/中越典子/藤村志保/津川雅彦
ナンバー 273
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

肉親を亡くした。住む家を流された。それでも助かった人々は深い喪失感と絶望を抱えながら暮らしていかなければならない。前に進もうとする人、トラウマに苦められる人、それぞれ悲しみの度合いは違っても、時の流れは平等に訪れる。物語は震災後の仙台、病院で働くヒロインの周辺で起きる出来事を通じて、被災地の人々の“今”を散文的に描く。被災地に単身とどまって住民に貢献している医師の夫を尊敬しつつ、今日一日をひたむきに生きようとする彼女の人生に対する姿勢が美しい。いまだ故郷に戻れない仮設住宅の老人たちと、営業を再開した漁港の活気。そこからは、復興は外部からの援助だけではなく、その当事者に小さくても希望を持たせ自助努力させなければなしえない現実が見えてくる。

麻酔医の隆子は、部下の純子に付きまとう自衛隊員に面会禁止を申し渡す。一方、夫・貞一は被災地で診療所を開きながら看護師の美菜と共に仮設住宅を巡回診察している。ふたりは週末に隆子が貞一の下に通う生活を続けている。

基礎がむき出しになった住宅跡は雑草が伸び放題、そこで行方不明の家族の遺品を探している男がいる。愛する者を失った人間の心は、整理がつくまでいったいどれほどの時間が必要なのか。まだまだ生々しい津波の傷跡が残る場所ではより鮮明な記憶が時としてよみがえるのだろう。だが、被害を受けなかった地域の人々にとってもはや過去。映画は、そんな忘れっぽい日本人に、「震災は終わっていない」というメッセージを送り続ける。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

美菜の義母が急病で倒れるシーンがあるが、都市部だったら119番通報で済むのに僻地ゆえヘリコプターで彼女を救急搬送する。米国ならば民間保険に入っていなければ後で目をむくような搬送費を請求されるはず。VIPでもない老婆を救うために莫大なコストと人手を投入する日本はつくづく“医療先進国”だと感じた。誰が費用を負担するのかといった問題は別にして。。。

オススメ度 ★★*

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