こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

TRASH! この街が輝く日まで

otello2014-11-26

TRASH! この街が輝く日まで

監督 スティーブン・ダルドリー
出演 マーティン・シーン/ルーニー・マーラ/ヒクソンテベス/ガブリエル・ワインスタイン/エドゥアルド・ルイス/
ナンバー 274
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

うずたかく積み上げられた都市からの大量の廃棄物、その中から少しでも換金できるモノを探してビニール袋を漁る。まともな家はない、愛してくれる親もいない、もちろん正規の教育は受けていない。それでも宣教師やボランティアのおかげで犯罪に手を染めずに生きている。物語は、ゴミ拾いの少年たちが偶然手に入れた財布を巡って、格差の現実と貧困の原因を突き詰めていく姿を描く。劣悪な環境で生まれ育っても正しいことは何かきちんと理解している彼らが直面するのは、政治家たちの腐敗を証明する鍵であるとともに、自らの運命を切り開く希望。そして最後まで戦い抜くのが正義であるという覚悟もできている。圧倒的な組織力を持つ警察を相手に決してひるまない行動力、それがブラジルの活力になっているのだろう。

数字が記された写真と鍵が入った財布を見つけたラファエロは、親友のガルド、ラットと共にコインロッカーに隠された手紙を回収。服役中の政治犯にそのメッセージを伝えるためにガルドは刑務所を訪れる。

身分証から、財布の持ち主が単身で汚職を暴こうとしていると知った3人は、更なる調査を進める。一方で警察も財布を奪還しようと包囲網を狭めていく。少年たちは暗号と謎を解きつつも追っ手をかわさなければならない。身軽な彼らが、アクロバティックに柵を上り壁を伝い素早く道路を横切り、迷路のように入り組んだスラム街を逃げ回る光景は、不当な権力に命がけで抵抗する“持たざる者”の矜持を称えているようで、スリルよりもむしろ痛快感を覚えた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

W杯や五輪で景気が上向いているにもかかわらず潤うのは一部の人間だけ、発展から取り残された人々はいまだ貧しい暮らしを強いられているリオデジャネイロ。かつては世の中に異議を唱える気概があったであろうマーティン・シーン扮する宣教師も、少年たちの熱意と勇気に打たれて重い腰を上げる。今は最低でも力を会わせれば未来は必ず変えられる、そんな少年たちの生命力がほとばしる作品だった。

オススメ度 ★★★*

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