こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

はじまりのうた

otello2014-11-29

はじまりのうた BEGIN AGAIN

監督 ジョン・カーニー
出演 キーラ・ナイトレイ/マーク・ラファロ/アダム・レヴィーン/ヘイリー・スタイニフェルド/ジェームズ・コーデン/キャサリン・キーナー
ナンバー 272
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

パトカーのサイレン、子供の嬌声、通行人の足音や息遣い、風の流れetc. 街路や雑踏に充満する生活音自然音をとり込んだサウンドは地に足をつけて生きている実感を伴い、歌われている詞は市井の人々のふとした共感を呼ぶ。ニューヨーク、成功するには難しいけれど、何かを始めようとする人にはチャンスを与えてくれる街。映画は落ちぶれた音楽プロデューサーと駆け出しのシンガーソングライターが街頭で録音したアルバムを作る過程を追う。それは男にとっては過去を取り戻す旅、女にとっては新たな未来への冒険。“音楽が何気ない風景を意味のあるものに変える”という言葉が、ビジネスを超えた音楽の力を象徴する。フェンダーミラーにエアバッグもない年代物の高級車が主人公の人生を饒舌に物語っていた。

飲んだくれて場末のライブハウスに入ったダンは、ステージに立つグレタの声にたちまち魅了される。早速プロデュースを申し出るがデモCDの製作費を工面できず、街中でのゲリラレコーディングを思いつく。

娘に見下され、別居中の妻にも邪険にされるダンはホームレスと見間違えるほど。かつての敏腕は時代遅れとなり、自らが創設したレコード会社をクビになる始末。小金にも困り無銭飲食までする。それでも音楽を聴く耳は衰えておらず常に斬新さを求めている。一方のグレタは恋人・デイヴとのセレブ生活もつかの間、彼に浮気されて今は友人宅に居候中。お互い失うものはない、夢と行動力があればどん底から這い上がれるとこの作品は訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

グレタが作詞作曲した歌をデイヴがポップス調にアレンジするが、グレタは頑なに拒む。あくまで自分のセンスと感情をダイレクトに感じてもらいたい。自らをアーティストと言ってはばからず信念を曲げないグレタの曲想は、コンサート会場のような大箱ではなく携帯プレーヤーで聞くのに向いているのだろう。大衆におもねなくても大丈夫、ネット発のヒットがこれからの主流になるのではと予感させる。。。

オススメ度 ★★★

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