こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フューリー

otello2014-12-01

フューリー FURY

監督 デビッド・エアー
出演 ブラッド・ピット/シャイア・ラブーフ/ローガン・ラーマン/マイケル・ペーニャ/ジョン・バーンサル/
ナンバー 277
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

良心なんか邪魔になるだけ、神なんか気休めにもならない。ここは交戦地域、どこから狙撃兵が狙っているかわからない、いつ砲弾が飛んできてもおかしくない、住民の中に敵が潜んでいるかもしれない。生死はほとんど運任せ、物語はそんな極限状態の最前線に放り込まれた新兵の目を通して戦争の真実に迫っていく。捕虜に引き金を引けなかった主人公が短期間の実戦経験で殺人マシーンに変貌していく姿は、同時に人間性を失っていく過程でもある。撃たなければ撃たれる、殺さなければ殺される、わずかな判断ミスが自分のみならず仲間の命を危険にさらす。ほどなく数えきれない“死”に慣れてしまった彼の瞳に宿るのは、何事にも動じなくなった無感情の冷たい光。戦争に正義なんかない、生き残った者が感じるのは底なしの虚無感だ。

第二次大戦末期、ドイツ領内に侵攻した米軍戦車部隊に配属されたノーマンは、鋼鉄の意志を持つ軍曹・ドンの指揮下に入る。だが、少年兵を見逃したせいで友軍の戦車が1両破壊され、ノーマンはドンに捕虜の処刑を命じられる。

味方の砲撃は堅牢な装甲に跳ね返されるが、敵は1発で味方の戦車を粉砕し、地面と平行に飛ぶ砲弾が乗員の首をかすめ取っていく。動く要塞のようなティーガー重戦車と機動力を生かしたシャーマン戦車、1対4にもかかわらず不利な状況は変わらぬまま、ドンの果敢な攻撃精神と機転の利いた知略でかろうじてティーガー戦車と渡り合う。この、至近距離で砲撃し合う戦車同士の“決闘”は、リアリティあふれる重量感で見る者を圧倒する。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

部下の前では鬼神のごとく振る舞い決して弱みを見せないドンが、誰も見ていないところでふと不安を表情によぎらせるシーンがある。何度も死線を乗り越えてきたドンでさえ、やはり極度の緊張が続く中では心が休まらない。そう、これは、戦場の悲惨さよりも、兵士たちの胸に生じる恐怖や罪悪感といったメンタル面でのストレスを体感させる映画なのだ。

オススメ度 ★★★*

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