こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ゴーン・ガール

otello2014-12-13

ゴーン・ガール GONE GIRL

監督 デヴィッド・フィンチャー
出演 ベン・アフレック/ロザムンド・パイク/ニール・パトリック・ハリス/タイラーベリー/キム・ディケンズ
ナンバー 289
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

消えた美人妻、残された血痕、次々に発見される不利な物証。夫にはアリバイはなく、隠し事をしている。人もうらやむような美男美女のカップルに何が起きたのか、驚愕の展開と予断を許さないハプニングの連続は片時もスクリーンから目を離せない。物語は、妻が誘拐されたと通報してきた夫が、逆に殺人の容疑者に仕立て上げられていく過程を描く。情報提供を呼びかけるのも、無実を訴えるのもTV、あらゆる局面で世論をリードしていくメディアの力が恐ろしい。不利な立場になった夫も、警察よりもキャスターの影響力を利用しようとする。“他人の不幸は蜜の味”的な大衆心理に踊らされる姿が滑稽だ。

妻・エイミーの失踪事件で“悲劇の夫”を演じていたニックだが、次々と彼の犯行を示唆する証拠とエイミーの日記が見つかる。そこには幸せだった日々がニックの怠惰と女癖のせいで崩れていく様子が綴られていた。

周囲の視線が同情から疑惑にかわっていくなか、ニックだけでなく、ニックの浮気相手までTVで堂々とインタビューを受ける。失踪や不倫といった非常にネガティブな話題にもかかわらず、“一般人”の彼らは悪びれずTVの前で胸中を語る。耳目を引き、うたかたの間スター気分に浸るのだ。そして視聴者は彼らの一挙手一投足に注目し、信用できる人間かどうか吟味する。陪審員による審理が行われる米国では世間の評判が裁判を左右する現実を象徴していた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、たかだかグータラ浮気亭主を懲らしめるのに、なぜエイミーはこれほどの手間暇をかけたのだろうか。“アメイジング・エイミー”にとってニックは殺したいほど許し難い存在だったのかもしれないが、そもそもミズーリ州では遺体も出ない状況で死刑判決が出るのか。もし成功しても今後は別人として生きなければならない不便が彼女につきまとう。エイミーほどのIQならばもっと簡単な手で彼を破滅に追い込めたはずだ。枝葉の驚きには満ちていたが、肝心の幹に疑問が残った。

オススメ度 ★★*

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