こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

あと1センチの恋

otello2014-12-16

あと1センチの恋 LOVE,ROSIE

監督 クリスチャン・ティッター
出演 サム・クラフリン/リリー・コリンズ/クリスチャン・クック/スーキー・ウォーターハウス/
ナンバー 290
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

いつも一緒に過ごしてきた。何でも相談し打ち明けてきた。仲の良い親友、でも異性と意識したときわずかな違和感を覚える。“好き”、たったそれだけを口にする勇気がない、そして失ったとき初めてお互いがいちばん大切な人だったと気づく。物語は幼馴染の少年少女がふとしたきっかけで結ばれず、その後もすれ違いの年月を送る姿を描く。一度逸したタイミングはいつまでたっても修正されず、目の前に手繰り寄せた幸せがするりと逃げる皮肉。運命に翻弄され何度も回り道を繰り返すふたりに、思いはきちんと言葉にしなければ伝わらないという教訓が込められていた。どんな結果が待っていようとも、まず告白から男女関係は始まるとこの作品は教えてくれる。

英国の田舎町に住むロージーとアレックスは幼少時からの兄妹同様に育ってきた。卒業ダンスパーティで共に違うパートナーを選んだことから齟齬が生まれ、そのままアレックスはボストンに旅立つ。

ロージーは妊娠、進学を諦め地元で子育てに専心する。アレックスは華やかな米国暮らしに己を見失い、スノッブな男になってしまう。それでも友人として連絡は取りあっている。その間、相手の近況に一喜一憂はするが、感情は共有できない。新たな人間関係の中で“彼(彼女)ならこの気持ちを理解してくれたのに”と不満を募らせる。そばにいてほしいのは誰なのかわかっている、だが身近にある偽りの愛に流される、そんなふたりの弱さがつい背中を押してやりたくなるほどもどかしく、愛おしいまでにリアルだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

冒頭で着飾ったロージーが“人生最良の日”とスピーチするシーンがあるが、実は彼女にとって最悪の日だった仕掛けが洗練されている。笑顔の裏で心は号泣している。後悔と諦めと少しの当てこすり。自分たちと同じ過ちを犯さないように、ロージーの娘と娘のボーイフレンドに忠告するふたりの複雑な表情が、友情が恋に変わる瞬間の直感を信じろと語っていた。

オススメ度 ★★★

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