こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フォックスキャッチャー

otello2014-12-18

フォックスキャッチャー FOXCATCHER

監督 ベネット・ミラー
出演 スティーブ・カレル/チャンニグ・テイタム/マーク・ラファロ/バネッサ・レッドグレーブ/シエナ・ミラー
ナンバー 283
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

名門の家系に生まれたけれど偉業を為した祖先の足元にも及ばない。ファミリーの名に恥じぬ人物になろうと努力したのに、人々が敬意を払うのは自分の財力であって業績ではないことを思い知っただけ。一方、五輪金メダリストにもかかわらずボロアパートに住みファストフードで腹を満たしながらトレーニングを積むマイナー競技の現実が、若者の精神を不安定にさせていく。新たな名声への欲望と切実な生活苦、そんな2人が出会ったとき彼らの人生の歯車が好転し始める、はずだった。物語はひとりのレスラーの目を通して大富豪の孤独を描く。語り部となる主人公もまた情緒不安定、静謐のなかにはち切れそうな緊張をはらむ映像は、狂気はいかに育つのかを丁寧に紐解いていく。

厳しい環境で練習に励むマークは、デュポン社の御曹司・ジョンからの申し出で、大豪邸敷地内の合宿所に引っ越す。レスリングに集中できるようになったマークは世界選手権で優勝、ジムには有望選手が集められる。

様々な肩書をカネで買ってきたジョンの次なる目標は、“五輪メダリストを育てたコーチ”。実際には資金を出すだけでほとんど何もしない。マークを始め周囲もそれをわかっているが口には出せない。ジョンは若いころから同じ茶番を繰り返していたのだろう、彼の秘書は訳知り顔でジョンが暴走しないようにカネの力を借りて見守っている。やがてジョンはマークの兄で同じく金メダリストのデイヴをチームに加える。ジョンにとって、同類の匂いがするマークよりも社交的で遠慮のないデイヴは探し求めていた友人。生気のない目は何も語らない、それでも要求を呑みジョンはデイヴへの友情を示す。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

次期五輪予選中に、ジョンは母の葬儀のため会場から姿を消す。価値観を押し付けられ反発し頭が上がらなかった存在、ジョンの心が歪んだのは愛してくれなかった母との確執が原因のひとつだったに違いない。だからこそ社会性もあり家族にも恵まれていたデイヴが許せなかったのだ。。。

オススメ度 ★★★

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