こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ソロモンの偽証 前篇・事件

otello2014-12-27

ソロモンの偽証 前篇・事件

監督 成島出
出演 藤野涼子/板垣瑞生/石井杏奈/富田望生/前田航基/黒木華/田畑智子/重松豊/小日向文世
ナンバー 300
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

誰かが嘘をついている。嘘をついていない者も、見て見ぬふりをする。みんな事実から目を背け、なかったことにして自分を偽っている。先生も、親も、警察も、そして生徒たちも。わが身を守るため? それとも学校の体面を保つため? 物語は校内での生徒の死を機に、この中学にくすぶっていたいじめ問題を浮き彫りにする。自殺なのか他殺なのか、復讐なのか事故なのか。カメラはあらゆる登場人物の内面に潜む人間の本質に迫っていく。優越感と劣等感と無関心が渦巻く教室、事なかれ主義がはびこる職員室、過保護と無理解に蝕まれる家庭。そんな中、立ち上がったヒロインが、死んだ生徒が何を訴えたかったのかを明らかにしようとする。全員が傷ついている、だが、真実のみが救いと癒しをもたらすのだ。

2学期最後の日、涼子と野田は雪の中で柏木の死体を発見する。警察は状況から飛び降り自殺として処理するが、後日、柏木は大出ら不良グループに殺されたと書かれた告発状が涼子と校長のもとに届く。

告発状の存在がTVレポーターに漏れ、担任も校長も追い詰められる。普段の行状から大出も犯人扱いされるが、担当の刑事は告発状の差出人を特定したうえ、稚拙な内容を否定する。さらに告発状を送ったひとりが交通事故にあい混乱に拍車がかかるが、大人たちは沈静化を図るばかり。しかし納得いかない涼子は、大出を被告人とする疑似刑事裁判の開催を主張する。その過程で、仲良し2人組のパワーバランス、涼子の葛藤、高圧的な教師に対する反感などが一気に噴出する。それらは誰もが胸の奥に抱えている残酷で無責任な負の感情。共感したくはないが認めざるを得ない不快さが映像に充満し、見る者の心に鋭いナイフを突き立てる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

有志を集めた涼子は米国流の陪審員制度を研究し、自らは大出の有罪を立証する検事役となる。真相を明らかにするには涼子自身も秘密を告白しなければならない。それでもなお固い決意で臨む涼子の瞳には、偽善で塗り固められた世界で生きる息苦しさから解放されたいという、切実な願いが宿っていた。

オススメ度 ★★★★

↓公式サイト↓