こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マップ・トゥ・ザ・スターズ

otello2015-01-06

マップ・トゥ・ザ・スターズ MAPS TO THE STARS

監督 デヴィッド・クローネンバーグ
出演 ジュリアン・ムーア/ミア・ワシコウスカ/ジョン・キューザック/ロバート・パティントン/エヴァン・バード/オリヴィア・ウィリアムス
ナンバー 2
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

下積みの者は野心を隠さず、スターになった者は後進の活躍に脅え、落ちぶれた者は現状を嘆く。誰もが虚栄心をむき出しにし、享楽的な時間を過ごすことで不安やストレスを紛らわせている。そんな街に舞い戻った1人の娘は、亡霊のごとく彼らの日常を蝕んでいく。だが、元々一般的な常識からズレた世界、むしろ痛々しくも健気な態度が、彼女の方がよりまともな精神状態なのではと思わせる。人間の心に巣食う狂気、それはどこからもたらされ、いかにして育つのか。映画は登場人物の内面深く覗き込み、強烈な“死”のイメージにとり憑かれた人々の悲劇を描く。幻覚とトラウマに苦しめられ感情を抑えきれないかつての有名女優を、ジュリアン・ムーアがトイレの中までさらけ出して熱演する。

ハリウッドにやってきたアガサはカムバックを狙う女優・ハバナの個人秘書になる。ドラッグ矯正中の子役スター・ベンジーは見舞った少女の亡霊に悩まされる。ベンジーの父・ワイスはハバナからアガサの話を聞かされる。

ハバナは1970年代に焼死した名女優・クラリスの娘だが、クラリスから受けた虐待の記憶に今も苛まれている。彼女が新作映画で演じるのはそのクラリスの役、ぜひやりたいけれど、自分もクラリスのような女になってしまうのではという恐怖も消せない。大きなやけど跡を持つアガサに“似た者同士”と言うのは、彼女も癒し難い傷と秘密を胸に抱えているから。ライバル女優の降板で得た主役の座に狂喜乱舞するハバナはスランプを抜け出そうとする。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

両親の真実を知った以上、汚れた血は残してはおけない。また、クラリスの星碑から彼女の本当の死因を直感したのだろう、母を焼き殺す女も許しておけない。複雑に絡まった運命、壊されるべき家族。アガサの行為でハリウッドすべてが浄化されるわけではない、それでも己の周囲の“穢れ”だけは取り除こうとする。甘美な“死”の誘惑の前で、アガサのただれた横顔が一瞬美しく見えた。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓