こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

幕が上がる

otello2015-01-17

幕が上がる

監督 本広克行
出演 百田夏菜子/玉井詩織/高城れに/有安杏果/佐々木彩夏/黒木華/ムロツヨシ
ナンバー 11
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

思い描いた世界観をステージで具現化する。その魅力は、俳優という人間たちを自由に操れる、まさに神になった視点の体験だろう。一方で演じる役者たちもまた、演出家の高い要求に応えるうちに、気づかなかった潜在能力を発揮していく。そう、演劇とは身体のパフォーマンスを通じて自らの限界を表現する至高の芸術なのだ。映画は高校演劇部を舞台に、芝居に情熱を燃やす女高生たちの葛藤と成長を追う。まだ将来の目標は定まってないが、何がやりたいか、何に向いているかといった漠然としたイメージはある。その中で、現実と折り合いをつけながらできる努力を精一杯しようとする。そこに彼女たちを指導する新任教師の演技へのくすぶった思いがシンクロする。西新宿の高層ビル群を、銀河を旅する列車の窓から見たような幻想的な風景に変える映像にしばし酔った。

秋の大会で“参加賞”に終わった演劇部は、さおりを新部長に据えて地区大会突破を誓う。新年度、新任の吉岡先生の下で全国大会レベルの舞台を作るためさおりは演出に専念し、部員たちは猛特訓に励む。

きちんとした指針がないために迷路をさまよっていたさおりたちに、吉岡は明確な道を示す。だが進路を決めなければならない高3生にとってはきつい選択。さおりたちは“今しかできないこと”に賭ける決意をする。人生が狂ってもいい、それほどまでに関わった人を魅了する演劇の、麻薬のごとき陶酔感が瑞々しい感覚で再現される。ためらっていては前へ進めない、退路を断つ覚悟で踏み出した者だけがチャンスをつかめるとこの作品は訴える。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

そして、さおりの創作の苦悩をはじめ、転校生と主演女優の確執、後輩のスランプ、さらには吉岡先生の事情などの“お約束”的なトラブルを乗り越えいよいよ地区大会本番を迎える。確かに先が予想できる展開ではある、それでも夢を追う若者の青春と友情のストレートな物語は非常に心地よかった。

オススメ度 ★★★*

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