こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジャッジ 裁かれる判事

otello2015-01-19

ジャッジ 裁かれる判事 THE JUDGE

監督 デイヴィッド・ドブキン
出演 ロバーロ・ダウニーJr./ロバート・デュヴァル/ヴェラ・ファーミガ/ビリー・ボブ・ソーントン/ヴィンセント・ドノフリオ
ナンバー 13
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

夢を追って旅立った。それなりに成功はした。でも結婚には失敗した。そんな主人公が故郷の小さな町に帰る。変わらない風景、懐かしい人々。だが長年判事を務めた父は、長兄の将来を奪い知的障害の末弟を見捨てた彼を心から歓迎はしていない。カメラは大都会で華やかに暮らす者に対して田舎に残った者が抱く、嫉妬と羨望に満ちた微妙で複雑な感情を丁寧に掬い取る。物語は、殺人事件被告となった父の弁護をする羽目になったやり手弁護士が、避けてきた父の人生と真正面から対峙し、同時に自らの生き方をも顧みるようになる過程を描く。“権威”の地位に君臨してきた老人の見当違いの頑固さと過剰な自己評価が痛ましくも人間臭い。

母の葬儀のために帰郷したハンクは父のジョセフと衝突、喧嘩別れする。ところがジョセフがひき逃げ容疑で逮捕され、予備審問で依頼した弁護士があまりにも無能なため、ハンクが代理を買って出る。

愛憎入り混じった目で地元民から見られ、息子たちには厳格だったジョセフが、今や老いて知力体力ともに衰えている。彼が死なせたのはかつて刑務所に送った凶悪犯。さらに証拠・証言はジョセフの“殺意”を裏付けるものばかり。心を開いてくれないジョセフにハンクは手を焼き、元恋人との束の間の再会に癒しを求める。その間、外に出る勇気がないと見下していた兄弟や元恋人のほうがしっかりと地に足の着いた生活を送っていると知る。このあたり、映画は法廷での丁々発止のやり取りや謎解きのミステリーとは距離を置き、家族だからこそ言えなかったわだかまりを一つずつ明らかにしていく。“出来のいい子ほど親不孝”なのは米国でも同じなのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて裁判が始まり、ジョセフは己の抱える秘密を告白して過去の判決に傷をつけるよりは、「判事」の名誉を守ろうとする。ジョセフの気持ちを理解しながらも自分の仕事を全うできないハンク。男として、人間としての矜持、それは本人にとって時に真実よりも尊いと、ジョセフの身の処し方が訴えていた。

オススメ度 ★★★

↓公式サイト↓