こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

KANO 1931海の向こうの甲子園

otello2015-01-27

KANO 1931海の向こうの甲子園

監督 マー・ジーシアン
出演 永瀬正敏/坂井真紀/大沢たかお/伊川東吾/ツァオ・ヨウニン/チャン・ホンイ
ナンバー 20
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

岡島秀樹風のダイナミックなフォームで速球と変化球を使い分ける投手、軽々と打球を外野まで運ぶ強打者、出塁すればすかさず次の塁を狙う俊足の野手、そして苦虫をかみつぶした表情のままの監督。球児ならば誰もが目標とする甲子園、その思いは日本統治下の台湾でも同じ。映画は1931年夏の甲子園で準優勝した台湾代表チームの奮闘を描く。日本人・漢人・現地人の混成チームが民族の垣根を超えた友情とチームワークで旋風を起こした事実は、日本人がいかに台湾に融和していたかを物語る。南国の小さな町の水田から銀傘新しい甲子園まで、CGで再現された背景には当時の報道写真に色を付けたような懐かしさを感じた。

嘉義農林の野球部監督を依頼された元松山商のコーチ・近藤は、選手たちに甲子園出場を宣言し猛練習を課す。厳しいが的確な指導はすぐに実を結び、就任2年で台湾予選を勝ち抜く。

まだまだ本土とはレベルの差があったであろうの選手たちに日本的な“野球道”を叩き込む近藤。南国的気質の地元の選手たちも日本がルーツの選手たちも「甲子園、甲子園」と口にしながらランニングするうちに徐々に目の色が変わり、夢に向かって努力する充実感を覚えていく。その過程で、水たまりが残ったままのグラウンドで練習試合をしたり、近藤がマスクを着けずに捕手を務めたり、さらに決勝戦の血染めのボールという星飛雄馬(or王貞治)的なエピソードなど、野球の常識を破るシーンも散見する。それでも、甲子園で勝ちあがっていくうちに、選手にも試合を見守る人々の間にもいつしか一体感が生まれる。そんな野球の魅力を伝える力をこの作品は持っていた。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

作り手は、野球だけでなく灌漑工事を完成させた日本人技師への感謝も忘れない。台湾にも日本支配を恨んだ人はいるはず。にもかかわらず日本が遺した近代化の功績はきちんと評価する。同じく植民地時代にも戦後にも日本から多大な近代化の恩恵を受けながらも、歴史の一部だけを見て反日感情を煽り立てる隣国とは大きな違いだ。京城商業野球部の朝鮮人少年が甲子園を目指す話などタブーなんだろうな。。。

オススメ度 ★★★

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