こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ANNIE アニー

otello2015-01-28

ANNIE アニー

監督 ウィル・グラック
出演 ジェイミー・フォックス/クワベンジャネ・ウォレス/ローズ・バーン/ボビーカナベイル/キャメロン・ディアス
ナンバー 21
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

成功者はよりリッチになり、経済活動から落ちこぼれた人々は食料配給の列に並ぶ格差社会。チャンスをつかみ勤勉に働き続けた男が見返りに得たものは、誰にも心を開けなくなった圧倒的な孤独だ。しかも、愛する人も愛してくれる人もいない状態を心地よいとさえ思っている。映画はそんな実業家が、偶然出会った少女から他人との絆を築きぬくもりを感じていく姿を描く。厳しい現実の中でも両親との再会を信じて生きるヒロインは、彼にとっては忘れていた“希望”の象徴となっていく。その過程で、21世紀のNYに甦らせた名曲の数々は少しズレた感覚を味あわせてくれる。への字口と三角眼で意地悪な養母を怪演したキャメロン・ディアスが異彩を放っていた。

毎週金曜日、生き別れた両親の帰りを待つアニー。ある日、市長選候補者のウィルに命を救われた場面がSNSで拡散する。ウィルはイメージ戦略にアニーを利用しようと彼女を食事に招待し、同居を提案する。

通信会社の経営者でもあるウィルは労働者家庭で育ったにもかかわらず、今は非ホワイトカラーの有権者を票田としか見ていない。身体的接触後には必ず除菌するほど彼らを見下し、当然清潔とは言えない風体のアニーにも嫌悪感を抱いている。だが、すぐにウィルの企みを見抜き駆け引きをするアニーの、10歳とは思えない利発さにも興味を持つ。このあたり、アニーはもはや明日に夢を託す健気な孤児ではなく、生き馬の目を抜くような変化の速い世の中でサバイバルする“運命と戦う少女”というキャラクター。あまり面倒を見てやりたいとは思わない強さを身につけている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、ウィルとアニーが暮らすスマートハウスを始め、最先端のハイテクに囲まれた環境は、物語のテーマとかみ合わず感情の盛り上がりを妨げている。歌とダンスを登場人物の喜怒哀楽とシンクロさせるべきなのに、必然性の乏しい楽曲に彩られた映像はいつまでもノリの悪いまま。もう一ひねり、表現上の工夫が欲しかった。

オススメ度 ★★

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