こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

龍三と七人の子分たち

otello2015-01-30

龍三と七人の子分たち

監督 北野武
出演 藤竜也/近藤正臣/中尾彬/小野寺昭/品川徹/伊藤幸純
ナンバー 17
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

仁義は廃れた。義理人情も過去のもの。“暴対法”のおかげで絶滅危惧種となったヤクザの代わりに,街では半グレがわがもの顔でのさばり、ショバ代や地上げ・押し売りといった昔ながらの手口から、オレオレ詐欺障碍者を装った借金取り立てまで時代に即したシノギで、弱い人々を食い物にしている。物語は、今や隠居の身となった元ヤクザたちが21世紀の犯罪者集団を相手に真っ向勝負を挑む姿を描く。堅気の家族からは疎んじられ、孤独と老いに脅えながら暮らしている。それでもヤクザの矜持となめられては終わりという強がりだけは捨てきれず、ますます周囲から孤立している。そんな彼らが集まって「組」を再建する過程で、世間からずれた感覚が巻き起こす小ネタの波状攻撃が繰り広げられ、畳み掛けるテンポの会話はショートコントを見ているような笑いを誘う。

息子一家と同居する龍三は、いまだドスを隠し持つなどヤクザ気質が抜けない。ある日、元兄弟分のマサと相談し、かつての仲間を呼び寄せて暴走族上がりの西が率いる詐欺師グループを懲らしめようとする。

若いころは切った張ったの血と暴力の世界で生きてきた。人も殺したし刑務所にも長く務めた。引退後は静かな余生を送っていたが、ヤクザの血が騒ぐのを抑えきれない。どうせなら枯れる前にヤクザとしてもう一花咲かせたいと願うジジイたちの思い。彼らがひとにらみでチンピラたちを追い払うシーンは爽快感すら伴う。おそらく“健さん”に憧れた世代なのだろう、アウトローの覚悟の違いを見せつけるのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがて、龍三の仲間の一人・モキチの孫娘を巡って、西との全面抗争が勃発するが、そこからはナンセンスギャグ連発のドタバタ劇に発展する。ジジイたちのゆる〜いやり取りから、手に汗握る派手なカーチェイスが見事にブレンドされたクライマックスまで、最後まで時間を忘れさせてくれる作品だった。

オススメ度 ★★★

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