こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

君に泳げ!

otello2015-01-31

君に泳げ!

監督 チョ・ヨンソン
出演 イ・ジョンソク/ソ・イングク/クォン・ユリ
ナンバー 293
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

怒ったコブラのような圧倒的に広い肩幅、その上に乗った小さな顔、引き締まったウエストと張り出した尻。主人公のひとりを演じるソ・イングクの、鍛え上げられそぎ落とされた肉体がスイマーの役柄にリアリティを与えている。プールを500往復するスタミナもラスト50メートルを無呼吸で泳ぎ切る肺活量も、彼の発達した胸郭が大いに説得力を持たせていた。映画は高校水泳部に所属する2人の競泳選手が互いに意識しながら五輪を目指す姿を描く。だが、天才肌と努力家、無産階級とブルジョア、正反対の性格と境遇の彼らがライバルとなるのは、水泳ではなく恋。極限まで自分を追い詰めトレーニングに励む動機が、好きな女を手に入れるためというのが微笑ましい。加えて個人競技における陰湿な足の引っ張り合いも盛り込まれ、ありきたりの青春スポ根モノとは一線を画す。

飲酒で高校を退学になったウォニルと遠征中の暴力事件で代表メンバーを外されたウサンは体育専門高校に転校する。しかしウォニルは一向に練習に身を入れず、ウサンは水泳部の空気が肌に合わず独自のメニューをこなす。

ジュニア時代からホープと目されていたウォニルは父の死で水泳から遠ざかっていたが、ポテンシャルは衰えていない。一方のウサンはエリート主義の父から多大なプレッシャーをかけられている。そんな2人が様々な紆余曲折を経た後友情を深め、幼馴染のジョンウンをめぐって初めて泳ぐ目的を見出していく。科学的トレーニングで身体能力を高めるウサンと、廃プールでひたすら泳ぎ山野を駆け巡るウォニルの対比が「ロッキー4」を思わせる。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

ただ、国内トップレベルの水泳部にしては緊張感が乏しく、かといってコミカルな処理も笑いを誘うほど昇華されず、物語の展開としてはゆるい印象。クライマックスへの感情の盛り上げ方も弱くあまり達成感に訴えてこない。それでも、イケメンの細マッチョを鑑賞する意味では十分におつりがくる作品だろう。マドンナの名が北の指導者と同じなのはなにかの隠喩だったのか?

オススメ度 ★★*

↓公式サイト↓