トレヴィの泉で二度目の恋を ELSA & FRED
監督 マイケル・ラドフォード
出演 シャーリー・マクレーン/クリストファー・プラマー/マーシャ・ゲイ・ハーデン/ジャレッド・ギルマン
ナンバー 27
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
夢想と現実がしばしば混同してしまう老婆と、他人に干渉されるのを嫌う老人。アパートの隣人となったふたりは最悪の出会いだったにもかかわらず、いつしか惹かれあうようになる。忘れていたときめきと相手が気になって仕方がないざわめき、青春の情熱は戻らないけれど、その気持ちは確かに恋。物語はふたりの独居老人が心を通わせ精神的に若返っていく過程を描く。死を待つだけではつまらない、最期まで楽しんだ方が勝ち。“あなたは死よりも人生を恐れている”の言葉に象徴される、きちんと生き切る大切さをこの映画は教えてくれる。息子も娘も大人になった、家族への責任は果たした。ならば残された時間とカネは己のために使う。人生は誰のものでもない、自分のものなのだから。
「甘い生活」に憧れるエルサと同じ階に、妻を亡くしたフレッドが引っ越してくる。クルマの修理代をフレッドが受け取らなかったことから、エルサはフレッドが気になり始め、機会あるごとに誘いをかける。
公園に出かけたのを皮切りに、ダンススタジオや高価なディナーにフレッドを連れ出すエルサ。彼女の行動力に戸惑いながらもペースを合わせるうちに、“枯れていた日常”が潤いだすフレッド。だが、しわだらけになっても理想の女になりたいと願うエルサは時おり馬脚を現し、一方でフレッドは彼女の女心が理解できず嘘をつかれたとつい怒ってしまう。いくつになっても男と女、“後期高齢者”の域に達してもなお駆け引きを続ける姿が微笑ましい。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
やがて、元気に見えるエルサの、本当の健康状態を知ったフレッドは、彼女の長年の夢を叶えてやろうとする。永遠の都でのロマンティックな夜を演出するために奔走するフレッド。そのあたりローマの名所旧跡巡りにはせず、主人公はあくまで街ではなく人間というスタンスが心地よかった。ボケとも介護ともほとんど無縁、こんな最晩年を送りたいと思える作品だった。
オススメ度 ★★★