こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グッド・ライ いちばん優しい嘘

otello2015-02-07

グッド・ライ いちばん優しい嘘 THE GOOD LIE

監督 フィリップ・ファラルドー
出演 リース・ウィザースプーン/アーノルド・オーチェン/ゲール・ドゥエイニー/エマニュエル・ジャル/コリー・ストール
ナンバー 23
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

無抵抗の村人を銃撃し、建物は焼き払い、家畜を盗む。貧しいけれど平和な暮らしを営んできた人々は圧倒的な暴力の前で一瞬にして略奪され、無事だった者は苦痛に満ちた長い旅に出るしかない。物語はスーダン内戦で孤児となった子供たちが、難民キャンプを経て移住、米国での日常に馴染んでいく過程を追う。水も食料もない着の身着のままの放浪、とりあえず危険はないが退屈なキャンプ、期待に胸を膨らませて臨んだ文明社会。流転する運命の中でもしっかりとリーダーの自覚と人間としての矜持を保つ主人公の姿に、生きることの苦難とすばらしさが凝縮されていた。“嘘”という概念がなかった彼らが、時には“よい嘘”が未来につながると学んでいく展開は、希望が人生を明るくすると訴える。

武装勢力の襲撃で両親を殺されたマメールら兄弟は、安全な場所を目指す途中ジェレマイアとポールの兄弟と合流、4年間の漂流の末にキャンプにたどり着く。そこで教育を受けて13年、彼らは渡米を認められる。

見聞きするものすべてに目を丸くするマメールたちだが、職業斡旋業のキャリーの援助で徐々に米国の価値観を身につけていく。もちろん環境に順応するのに精いっぱいで思い出したくなかったのだろう、彼らはその間、悲惨な体験を米国人に話したりはしない。米国人からすれば地獄を見てきたにもかかわらず、マメールらはむしろ結婚していないキャリーの心配をしたりする。仲間だけでなく身近な人を思いやる心を失わないマメールに、家父長の責任感を感じた。そしてキャリーもまた、離れて引き取られたマメールの妹を探すなど、彼らのケアに仕事以上の充実感を覚えていく。人は他人と関わりの中で成長するのだ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてマメールは、自分の身代わりで拉致された兄・テオの生存情報を得て、単身ケニアの難民キャンプに飛ぶ。いまだ“嘘”を知らないテオにマメールが“よい嘘”もあると諭すシーンに、自己犠牲こそが最高の美徳であると教えられた。

オススメ度 ★★★★

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