こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フェイス・オブ・ラブ

otello2015-02-09

フェイス・オブ・ラブ THE FACE OF LOVE

監督 アリー・ポジン
出演 アネット・ベニング/エド・ハリス/ロビン・ウィリアムス/エイミー・ブレネマン/ジェス・ワイスクラー
ナンバー 31
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

偶然出会った、死別した夫と瓜二つの男。別人なのは分かっている、でも確かめずにいられない。待ち伏せし、尾行し、言葉を交わすうちに、思慮深く思いやりがある魅力的な彼の虜になる。物語はそんなヒロインが、忘れかけていた人を愛する気持ちを取り戻すうちに、感情の暴走と葛藤する姿を描く。記憶の中の夫と現実に目の前にいる新恋人、戸惑いと逡巡のなかで彼女は大胆になる。一方、男にとっても人生最後の恋、彼女は創作のエネルギー源となっていく。時間的にも金銭的にもゆとりがある上に守らなければならない家族もいなくなったシニア世代の、まだまだ異性に情熱を燃やし続ける“攻め”のライフスタイルが輝いていた。お互いにネットで検索しあってプロフィルを探るあたりが現代的だ。

30年連れ添った夫・ギャレットを事故で亡くしたニッキーは、美術館でギャレットそっくりの男・トムを見かける。トムはカレッジで絵画を教える画家、ニッキーはトムに個人レッスンを依頼する。

ニッキーとギャレットが鴛鴦夫婦だったのは周知の事実。だからこそニッキーはトムを誰にも紹介できない。トムは時々ニッキーの振る舞いが理解できず苛立つが、謎めいた態度が喪失感から生まれると解釈する。そのあたり、自分の思いを押し付けるのではなく、あくまで相手の胸中を慮る。それは早急に「セックス」という結果を求めなくなったゆえの余裕。駆け引きも打算もない、肉体的な快楽よりも心を通わせることを優先させるふたりの、大人のたしなみが奥ゆかしい。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

やがてトムの存在はニッキーの娘・サマーの知るところとなる。だがサマーは強烈な拒否反応を示し、トムを追い出そうとする。そしてニッキーはトムに対して思わず「ギャレット」と叫んでしまう。ニッキーがトムの瞳越しに見ていたのはギャレットの幻影なのか、真実を悟ってもなおニッキーへ変わらぬ愛を捧げるトムの、アーティスト魂が切なくも美しかった。

オススメ度 ★★*

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