監督 入江悠
出演 亀梨和也/深田恭子/伊勢谷友介/小澤征悦/小出恵介
ナンバー 33
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
“死なず殺さず”。生き残るためにはどんな手段も使うが、決して命を失うような行動はとらない。それは存在を公にはできないから、組織としても工作員としても。騙したはずが騙されて、仕掛けられた罠にかかっても逆手にとって利用する、身分を偽装し敵の懐に潜り込み重大な機密を奪う任務を負った男は、幾重にも張り巡らされたトラップと、複数の競争相手を向こうに回して奮闘する。第二次世界大戦前夜、映画はそんなスパイたちの虚々実々の駆け引きをアクションたっぷりに描く。可能な限り暴力に訴えず、変装と開錠技術、そして足の速さで逃げ切ろうとする主人公の、欧米韓のスパイものとは一線を画すスマートな身のこなしの数々は、むしろ“怪盗映画”と呼ぶにふさわしい。
士官学校で上官を誤殺し死刑判決を受けた男は、特務組織・D機関のスパイとなり嘉藤というIDを与えられる。嘉藤は新型爆弾の設計図が隠されたブラックノートを手に入れるために南方の島に飛び、米国大使に近づく。
漠然と下っただけの階段の段数や広げた地図の下のアイテムを記憶するなど、一瞬の観察眼と鋭い分析力が必要とされるスパイ。語学を始め格闘技や金庫破り、奇術まがいのトリックまで叩き込まれる。優秀な成績で訓練を終えた嘉藤にとって怠惰な米国大使の信頼を得るのはお手の物で、知己を得てすぐに公邸に出入りするまでになる。そこで大使に虐待を受ける日本人メイドを助けたことから、嘉藤は彼女と恋に落ちる。だが彼女は独立系のスパイ、嘉藤はせっかく盗み出したブラックノートをまんまと横取りされる。
◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆
ただ、その間繰り広げられる、潜入・強奪・逃走・追跡劇はサスペンスにもスピードにも乏しく、安っぽいTVドラマを見ている気分。嘉藤を演じる亀梨和也の肉体からはリアリティがまったく感じられず、アイドル映画の域を出ていない。せめてスタイリッシュな映像に仕上げていれば退屈しなかったのだが。。。小さいクルマに仲間とすし詰めになるエピローグは、まるで「ルパン3世」だった。
オススメ度 ★★