こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

マエストロ!

otello2015-02-13

マエストロ!

監督 小林聖太郎
出演 松坂桃李/miwa/古館寛治/濱田マリ/モロ師岡/重松豊/西田敏行
ナンバー 34
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

音楽への情熱はまだ冷めていない。でも生活のためにカネを稼がなければならない。廃工場に集合した演奏家たちは、揺れ動く葛藤を抱えながら、また楽器を奏でられる喜びを抑えきれない。そんな彼らの前に現れたのは、内装工事業者の作業服に身を包んだ粗野で下品なジジイ。物語は一度解散した楽団と強烈な個性の指揮者が互いにエゴをぶつけ合いながらも、音楽という芸術を究めるために全力を尽くす過程を描く。卓越した耳とセンスで個々の欠点を指摘し、罵倒し、できるまで繰り返させるやり方は、まさに命がけの決闘。若くしてコンサートマスターとなった主人公の、ワガママな先輩楽団員とワンマン指揮者との軋轢に苦悩する姿は、“中間管理職”の辛さがにじみ出ていた。

若手ヴァイオリニスト・香坂を中心に再結成したオーケストラの練習場に天道と名乗る正体不明の老人が登場、“運命”と“未完成”の指導を始める。恐ろしく口の悪い天道に楽団員たちの不満が募り、香坂も彼らに同調する。

指揮者としての力量は認めるが、経歴不詳の天道に楽団員たちは興味津々。無名と見下していたのにいつしか彼の指揮に魅力を覚える者もいる。一方でプライドの高い者は天道に対する嫌悪感を膨らませていく。ひとり混じったアマチュアのフルート奏者・あまねだけは古いしがらみにとらわれず天真爛漫な態度を貫く。さすがにオーケストラ全員の個人事情までは追えないが、主要キャラクターの背景をきちんと説明し映画に奥行きを持たせている。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

そして紆余曲折を経ながらも迎えた本番、カメラはステージに上がったオーケストラの前後左右上下を変幻自在に移動し、映像に圧倒的な立体感とスピード感をもたらす。個人主義的な演奏家の集まりに見えた楽団員たちも人間関係の大切さを学び、天道も昔の失敗から自分が憎まれ役になることであえて楽団員が結束するように仕向けたのだろう。そのあたりを意識させずに下ネタを飛ばしまくる天道の背中にダンディズムを感じた。

オススメ度 ★★★

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