こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密

otello2015-02-21

イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 The Imitation Game

監督 モルテン・ティルドゥム
出演 ベネディクト・カンバーバッチ/キーラ・ナイトレイ/マシュー・グード/マーク・ストロング/チャールズ・ダンス/
ナンバー 41
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

敵の軍事情報をすべて手に入れ、戦争を勝利に導いた功労者。本来ならば功績を称えられるべきなのに、彼の存在は一切記録に残っていない。ただ、気難しい数学者かつ性犯罪者としての“現在”があるだけ。物語は、そんな主人公が難攻不落の暗号を解読するまでの奮闘を描く。数学的アプローチのみならず、クロスワードを解く柔軟さとふとした出来事にひらめく直感が必要とされる難題に挑み続ける彼の姿は、あらゆる努力を厭わない信念の持ち主というより、奇癖を持つ非常識な変人。他人の気持ちを忖度できず、きちんとコミュニケーションが取れない。もちろん女心など理解しない。天才と呼ばれる人種独特の強烈な個性と誰にも愛されない孤高を、ベネディクト・カンパーバッチがリアリティたっぷりに再現する。

第二次大戦中、ドイツ軍のエニグマ暗号を研究する英国秘密機関に雇われたアランは復号マシンの開発を始める。同僚となじまず孤立するアランに手を差し伸べたのは、唯一の女性研究員でパズル解きの才能あふれるジョーンだった。

頭が悪いと思った者の言葉には耳を貸さないアランだが、クロスワードパズルの能力で彼を上回るジョーンの忠告は聞く。彼女の気遣いで“共同作業”の大切さを学んだアランが、少しずつ社会性を身につけていく過程で見せるズレた感覚が笑いを誘う。やがて、アランはマシンを完成させるが、ドイツ軍にエニグマ解読を気づかれないための偽装をする。誰を救い誰を見殺しにするのか。その選択肢を与えられた苦悩が、初めて人間らしい感情を吐露した瞬間だった。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

映画は、戦後、わいせつ罪で逮捕されたアランが取り調べの席で体験を語る体裁を取る。研究所で見聞きしたことは絶対に口外できない最高機密、友情を交わした仲間との再会もかなわない。だれもが彼のそばから去り、心を癒すのは自ら創造した人工知能のみという孤独の中で、救国の英雄であるはずの自分が同性愛の罪に問われている理不尽。身の上話に捜査員が耳を傾けてくれていた時間、彼は至福を味わっていたに違いない。。。

オススメ度 ★★★★*

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