こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生

otello2015-03-11

アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生 ADVANCED Style

監督 リナ・プライオプライト
出演 ジョイス・カルパティ/リン・デル/イロナ・ロイス
ナンバー 57
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています

「50代なんてまだまだ小娘」と言いたげなシックな装いから、原色を強調した派手な色使いまで、身にまとうもので自己主張する高齢女性たち。いまだ仕事を持ち経済的に豊かな者もつつましく年金暮らしをしている者も、自身をゴージャスに見せようと考えている。いや、他人の目などもはや気にしない。自分がときめいて、自分が満足すればそれでいい。最初は“妖怪”のごとき厚塗りの老婆がいつしかチャーミングな乙女に見えてくるから不思議だ。いくつになっても“女子力”失わない、というよりも年齢を重ねて取り戻したのだろう。そんな生き方に、フレッシュな精神を保つ秘訣は、好奇心を忘れずチャレンジを怠らないことだと教えられた。彼女たちにとって、ファッションとは生活そのものなのだ。

NYの路上でオシャレな年配女性に声をかけスナップを撮り続けるカメラマンのアリ。彼がブログ「ADVANCED Style」で公表した写真は大いに共感を呼び、写真集として出版される。

登場するのは60代から90代まで様々。体がシャキッとしているハーレム出身の元ダンサーは、そのスタイルの良さから“LANVIN”のモデルに採用される。輝く若さばかりもてはやされる米国の価値観に対して一石を投じる、積み重ねた年月にこそ上質を見出すフランス人らしい選択に、あらゆる老人たちは快哉を叫ぶはず。また、オレンジの自髪でつけまつげを作り目元を飾る90代の老婆は、肉体的には相当の衰えが来ているのが立ち居振る舞いからわかる。それでも少女の心を胸に宿している姿が“カワイイ”と思えてくる。“常識”の軛から解放された自由な発想で人生を楽しむ彼女たちはとても魅力的だ。

◆ネタばれ注意! 以下 結末に触れています◆

加齢は抗うべき対象ではなく受け入れるもの。同時に、社会人だったころと違い、迷惑さえかけなければ多少のハメを外しても周囲は寛容に見てくれる。映画の、あくまで老いを肯定する姿勢が心地よかった。ますます進む高齢化社会における余生の送り方だけでなく、ファッション業界への新たな提案となる作品だった。

オススメ度 ★★★

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